「口の中の異変は、大病のサインのことが多いんですよ」
そう語るのは、中城歯科医院の中城基雄院長。専門の口臭治療を含め、日本全国から患者さんが来院し、30年以上、延べ数万人の口腔治療をしてきたスペシャリストだ。
「舌や唇、歯茎は毛細血管が集まっている場所です。血液の滞りや色の変化が見えやすく、体の不調がサインとなって現れます。特に舌の裏は体の中で唯一、静脈がじかに見える場所。血液に重大な問題が生じたときは、異変が顕著になります。私の専門分野である東洋医学にも、『舌診』という言葉があり、“口の中を見れば病気のシグナルがわかる”といわれているんですよ」(中城先生・以下同)
つまり、口の中の異変をキャッチすれば、大病を未然に防ぐことができるというわけ。早速、注意すべき症状と、そこから予測できる病気を教えてもらった。
■舌
「舌は情報の宝庫です」と、中城先生。毎日、舌の色と形に異変がないか、チェックしよう。健康な人の舌の色は、桃の皮のような薄いピンク色だが……。
「舌の表面が紫色になったら、かなり危険な状態です。脳卒中や心筋梗塞を起こす恐れがあります」
紫色になるのは、血中の酸素が足りないから。酸素が少なくなると粘性の高い赤血球が増加し、血液がドロドロに。
「そのドロドロした血液が細かい血管を無理して通るため、脳卒中や心筋梗塞を起こしてしまうのです」
最初は舌の上に、紫色のほくろ状の点が現れ、全体に広がっていく。舌の色を自分で判断するのが難しいなら、家族などと比べっこするといい。その状態が重症化すると、舌の裏の血管にも異変が現れるという。
「健康な場合、舌の裏の血管はうっすらと青く見えます。これが紫色や青黒くなると、前述のように酸素が足りなくなっています。また、血液がドロドロなので、血管が浮き出てボコボコした状態になってしまうのです」
また、あっかんべーをしたときに、舌を真っすぐ前に出せなくなるときは注意が必要だ。
「舌を前に出そうとしても、左右にずれたり、ピクピクとけいれんするのは、脳卒中につながる確率がかなり高いですね。じきにつまずく、ろれつが回らないなどの症状も出始めます」
次に舌の形をチェック。
「健康な人の舌は、ふちがなめらかですが、ふちに歯の跡が残って、ギザギザになっている人がいます。これは水分が滞って、むくんでいるから。腎臓の働きが低下している証拠です。心臓のポンプ機能が弱って、血流が乏しくなっている可能性も考えられます」
放っておくと自律神経が乱れ、息切れ、消化不良、だるさ、めまいなどの慢性的な症状につながるので注意が必要だ。