「体がだるくて朝起きられない、日々の頭痛……これらの症状は、栄養不足で引き起こされているケースが多いんです。自分に足りていない栄養を体にしっかり取り込めば、症状を改善できる可能性があります。そうやって、薬を使わずに“栄養摂取”で病気を治そうとする治療法を、オーソモレキュラーといいます」
そう語るのは、日本初の栄養治療法専門クリニックの院長・溝口徹先生。『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』(光文社新書)を3月に出版したばかりだ。
「現代医療における、“栄養面での視点”の欠落」を問題視し、欧米を中心に発展してきたという「オーソモレキュラー療法」は、いま世界のお金持ちがこぞって実践しているという。
「食事療法とサプリメントを併用することで、病気にならない体を作ることが目的。疲れやうつ、アレルギー、更年期障害、がん予防などに効果があるといわれ、ほかにも妊活中の女性や、睡眠障害のある方、アトピー肌に悩む人などなど、クリニックに訪れる人はさまざまです」(溝口先生・以下同)
サプリを用いる理由は、バランスのいい食事を心掛けているつもりでも、十分な栄養が足りているとは限らないからなのだとか。そこで溝口先生に、最先端の栄養療法に基づいた食事のルールを教えてもらった。
■「糖質よりタンパク質」が鉄則!
一般的に、食事は「三大栄養素」といわれる炭水化物(糖質)・脂質・タンパク質をバランスよくとることが求められている。厚生労働省は’15年、18〜69歳までの男女は、「炭水化物50〜65%、脂質20〜30%、タンパク質13〜20%」が理想のバランスだと発表したがーー。
「このバランスが理想というのは、大きな誤解です! 40〜50代の女性のほとんどの人が、糖質をとりすぎています。ご飯、パン、麺、芋、くだもの……などなど、“普通”と思っている食事にはそもそも多く含まれており、糖質過多になりがちなんです」
糖質の摂取によって血糖値が急激に上がると、インスリンというホルモンがすい臓から分泌される。インスリンが過剰に分泌されると、かえって低血糖を引き起こしたり、すい臓の働きを低下させてしまう。知らず知らずのうちに内臓機能の低下、低血糖によるイライラやうつなどの原因になっているのだ。
「オーソモレキュラーでは、炭水化物や糖質を減らし、代わりに肉や魚からタンパク質をたっぷりとります」
■ご飯は控えめでも問題なし!
ざっくり言ってしまえば、「炭水化物はとらなくてもいい」というのがオーソモレキュラーの考え方。でも、ご飯を抜いた日は、力が出ないことが多いのだけれど……。
「人の体は、糖質抜きでも回るようになっているんです。お米を食べないと疲れやすいと感じる人は、それだけ自分の体が糖質に依存しているということ。徐々に減らしていくことを目指しましょう。カロリー制限ではないので、必要なエネルギーはタンパク質で補うとよいです」
ご飯1杯分のエネルギーは約250kcal。じつは、「卵1個とサバの水煮缶100g」、「納豆1パック(40g)とアーモンド(20粒)」、「豆腐1丁(200g)とオリーブオイル(大さじ1)」といった組み合わせで、十分な代替品になるのだ。
■40〜50代女性に必要なのは「鉄分!」
溝口先生は、多くの女性の「鉄分不足」も指摘する。
「特に閉経前後の女性は、極度の鉄欠乏状態。ところが、健康診断では基準値が低く設定されているため、貧血とはいわれません。貧血でなければ鉄は足りている、というのは間違いです。お肌の調子が悪い、爪がもろくなってきた……。これらの症状は鉄分を多くとるだけで改善されるはずです」
鉄分を多く含んでいる食材というと、プルーンやほうれん草、ヒジキなどを思い浮かべるが、これらは体に吸収されにくい、と溝口先生は語る。
「『ヘム鉄』に分類される赤身の肉、貝類、レバーからとるのが効果的です」