昨年12月、米誌『ニューズウィーク』から「『キャノーラ油が脳に悪影響を与える』という研究結果が出た」という報道が流れた。
物価上昇が続く昨今の日本経済、台所事情に優しく健康にもよいとされているキャノーラ油が脳に悪影響を与えるなんて、主婦にとっては非常に残念なニュースだが、その内容というと……。
調査は、米テンプル大学の研究グループが行った。アルツハイマー病になるよう遺伝子操作されたマウス2群を、通常の食餌をする対照群とキャノーラ油小さじ2杯分を毎日摂取する実験群に分け、実験を1年間継続したところ、キャノーラ油を摂取したマウスはそうでないマウスより体重が重くなり、短期記憶、作業記憶の学習能力が低下していたというものだ。
この研究結果について、神経内科医で認知症問題にも詳しい米山医院の米山公啓先生は次のように解説する。
「この調査は、キャノーラ油に含まれているトランス脂肪酸に問題があるということだと思います。トランス脂肪酸が血中の悪玉コレステロールを増やして動脈硬化を進めるため、心筋梗塞や脳卒中のリスクが増加します。その結果、脳血管性認知症が増えるということでしょう。また、トランス脂肪酸が遺伝子にも影響してアルツハイマー型認知症のリスクも高まるということも言えるのでしょうね。ただ、これはあくまでもマウスでの実験で、人体での疫学調査ではないことに着目してください」(米山先生・以下同)
トランス脂肪酸は血管の疾患、肥満など、健康を害するリスクが高いことで知られており、アメリカなど欧米諸国ではトランス脂肪酸の使用制限を行ったり、トランス脂肪酸の含有量の表記を義務付けている。
今回の実験はマウスを使ったものであり、給餌としてキャノーラ油だけを与えられ続けたケースだということに着目してほしいと米山先生は話す。
「確かにトランス脂肪酸の取りすぎは問題ですが、人間の場合、もっと種類豊富に食事を取りますから、ここまで極端な結果になることはないでしょう」
トランス脂肪酸以外にも認知症を悪化させるような食品はあるのだろうか。米山先生は、実は現代人の「砂糖の取りすぎ」のほうが、注意が必要だという。
「甘い物を取りすぎると肥満になりますが、肥満は認知症のリスクを高めます。認知症を発症した人の多くに『それまで砂糖の異常な過剰摂取が認められている』ことがわかっています。若いころから甘い物を好む人は、年齢を重ねるにつれて“ほどほど”にすることを心がけてください」