国産のアスパラガスがぐっと安くなるこの季節。実は、アスパラガスは野菜の中でも高い抗酸化力を誇る。抗酸化力とは酸化を防ぐ力、つまり、老けない力だ。
「アスパラガスの成分としては、疲労回復効果の高いアスパラギンというアミノ酸が有名です。ほかにもタンパク質を多く含み、ビタミンA、B、C、Eをバランスよく含んだ優秀な野菜です」
そう語るのは、アスパラガスの品質や成分、栽培技術などを研究している弘前大学の前田智雄教授。
「アスパラガスに含まれる機能成分のアスパラギンは、その名のとおりアスパラガスから発見された成分。うま味のもとであるアスパラギンは、酵素の働きにより体内でアスパラギン酸に変わります。そして、体内でエネルギー代謝を活発にし、疲労回復を早めてくれるんです。さらにタンパク質の合成を助け、皮膚の新陳代謝も活発にします」(前田先生・以下同)
疲労回復効果、美肌効果があるアスパラギン酸のほか、特筆すべき成分はルチンだ。
「機能性成分であるポリフェノールの一種、ルチンを100グラムあたり10〜50ミリグラムと、野菜としては非常に多く含んでいます。ルチンはそばに多く含有される成分で、抗酸化活性が強く、’50年代からヒトに対するさまざまな生理活性の報告があります。毛細血管強化、動脈硬化予防、心疾患予防、脳梗塞予防などの効果があるといわれているんですよ」
ポリフェノールの一種であるルチンは、光に当たった植物の中にできる成分。自分で移動できない植物が紫外線などのストレスから身を守るために作りだした成分なので、抗酸化力が高い。ヒトの体内に入ったルチンは、“老けの元凶”・活性酸素を除去したり、血管を強化してくれるのである。
また、ルチンはビタミンCと一緒に摂取することで、さらに抗酸化作用が高まる。どちらの成分もふんだんに含むアスパラガスは、まさに“若返り野菜”なのだ。
かつて“ヨーロッパのごちそう”だったホワイトアスパラが、近年はスーパーなどにも出回るようになった。が、白いアスパラガスにはルチンが含まれていない。
「グリーンアスパラと同じものを、光に当てずに育ててできるのがホワイトアスパラ。よって、ホワイトアスパラにルチンは含まれず、抗酸化力も高くありません。その代わり、サポニン化合物のプロトディオシンという苦味成分があります。ルチンとは逆に、光に当たってグリーンアスパラになると消えてしまう成分で、強心効果、強精作用、白血病・大腸がん細胞に対するがん細胞増殖抑制作用などが報告されています。ただ、いずれも培養した細胞に関しての作用についての報告で、人体への効果は研究段階です」
ここ数年、渋い紫色をしたムラサキアスパラもよく見かけるようになった。
「グリーンアスパラと同じように、ムラサキアスパラにもルチンが多く含まれます。ほかに、抗酸化活性の高いアントシアニンが多く含まれており、似たような効果が期待できます」
そんなアスパラガスの健康効果を損なわず、いちばんおいしく食べられる調理法を前田先生が教えてくれた。
「グリーンアスパラ、ムラサキアスパラに含まれる植物性のアミノ酸は、動物性の食材に含まれるイノシン酸と非常に相性がいいので、肉やチーズなどと一緒に食べるのがおススメ。ホワイトアスパラのプロトディオシンは塩分との相性が抜群なので、素揚げして塩でいただくのが最高です」