団塊の世代が65歳以上となる今年、高齢者人口は3,395万人を数え、今後も年々増加していくという。深刻な超高齢社会を目前に私たちは何をすべきか?本誌は平成26年度版厚生労働白書に、超高齢社会を生き抜くヒントを発見した!
高齢者が介護を受けたり病気で寝たきりになったりせず、自立して健康に生活できる期間を示す「健康寿命」に関する調査報告がそれ。簡単に説明すると、男女別に65歳以降、何歳まで健康な日常生活を過ごせるかを、同省が都道府県別に算出した調査データだ。
白書によると、健康寿命が最も長いのが、女性では静岡県が全国第1位(75.32歳)。男性も静岡県は第2位(71.68歳)にランクイン。さらに昨年、静岡県が独自の健康寿命調査を実施。県内35市町別の健康寿命を調査したところ、女性では川根本町が86.84歳で第1位。同町は男性でも83.37歳で第3位という文字どおり“健康寿命日本一の町”だと判明した。
なぜ川根本町には元気で健康なおばあちゃん、おじいちゃんたちがたくさんいるのか。本誌はその秘密を探るため、現地へと向かった。
大井川鐵道「千頭」駅から車で5分の場所にある公民館。ここでは介護予防事業の一環で、65歳以上の高齢者たちが大勢集まり、グループ活動を行っている。この日は、町内の29地区で毎月1回、町が主催している「生きがいサロン」が開催されていた。
「“笑うことで健康になる”をコンセプトに開催しているサロンです。ここ小長井地区では、全員がコスプレ姿で歌って踊ります。日常生活とはまったく違うシチュエーションを楽しみながら、保健師による介護予防のアドバイスなども行っています。閉じこもり予防も兼ねて、横のつながりを強くして、高齢者を孤独にしないようにしています」(静岡県川根本町地域包括支援センター長・池本祐子さん・以下同)
この「生きがいサロン」は’03年からスタートした事業。現在、町内で約800人の高齢者が参加しているという。また、町内の全地区で、年1回の栄養講習会も開催。栄養士の指導のもと、高齢者の低栄養を改善するためのアドバイスを行い、町の食生活推進協議会のボランティアが、実際に料理を作って、集まった高齢者に食べてもらっているそう。
「たとえば、骨を丈夫にするための乳製品を摂るために、スキムミルク(脱脂粉乳)を入れてごはんを炊くなど、実際に食べていただき、その料理のレシピもお渡しします。講習会をやるごとに、みなさん自分の家でも作ってみたいという意識が高くなってきてますね」
「生きがいサロン」に参加し、サザエさん一家のカツオに扮した、川村ことさん(92)は長寿の秘訣を次のように語る。
「お茶は朝昼晩で10杯以上は飲みますね。この月1回のサロンとは別に、毎週水曜日に高齢者が集まる場所があって、そこで絵を描いたり、習字をしたり、みんなでワイワイやるのが楽しいです。食べ物は週に1回はお肉と焼き魚は食べる。毎朝ヨーグルトもよく食べます。ひとり暮らしですが、何も不自由はしてないです」
今回、取材した先々で感じたのは、川根本町の高齢者の方々はとにかくお茶をたくさん飲み、仕事と運動が大好き。食べ物は牛肉好きが多いということ。そして何よりも健康を維持するための自己意識が高いという点が共通していた。