毎月毎月“自転車操業”。いっこうにお金が貯まらないと悩んでいるのは、余計なモノを持ちすぎているかもしれない――。
「老後を迎えると、嫌でも収入が減り、使えるお金は限られます。現在の年金モデルは、夫が会社員の2人暮らし世代で月22万円の支給額ですが、今後減ることが予想されます。いまのうちから不要な支出を減らし、手元にお金を残しておく必要があるでしょう。50歳までに1,000万円は貯めておきたいですね」
そう語るのは、元雑誌編集者で“家計”について20年以上にわたって取材してきた経験を持つ、消費経済ジャーナリストの松崎のり子さん。一般企業の場合、多くは60歳が定年。再雇用や再就職をしても、定年後の収入が3割から半分に減ってしまう人が2割以上だという。
早めに老後資金を貯めておきたいけど、生活レベルは落としたくないと考える人は多いが……。
「上がっているのは生活レベルではなく出費だと考えてください。年収が上がるにつれて、甘くなった出費が増えているのが問題。その中には、本来は使わなくていいお金が潜んでいます。お金の出方を修正すれば、自然と手元にお金が残り始めます」(松崎さん・以下同)
新入社員のころ、30歳までに1,000万円貯めることを目標に立てた松崎さん。見事5年ほどでその目標を達成したという。5月に出版した『定年後でもちゃっかり増えるお金術』(講談社)では、そんな経験も生かし、さまざまなお金を貯める方法を紹介している。
「これまで取材してきた、貯め上手の家庭と、貯まらないザル家計の違いは、お金の『貯め方』より『使い方』にありました。そもそも使わなければお金は貯まります」
そこで、松崎さんが支出を減らす方法を伝授。
「ストレス発散でお茶代がかさんだり、見えのために不必要に買い物をしてしまったり。そんな不満は減らして、なるべくお金をかけない人間関係にシフトしましょう」
ママ友や同僚に誘われるままに付き合っていると、「しょうがない」と思いつつ、食事や飲み会で数千円単位でお金が出ていくもの。また、SNSにあふれる他人のイベントを見ていると、「つい自分も」と新しいレストランに行ってみたり……。
「お金は使いたいモノに使うべきであって、不満解消のために使ってしまうのはダメ。グチや見えのためだけの、不満のもとになるような人間関係は減らしましょう。お金を使うことは本来楽しいものです」
また、ストレスをなくして健康に生きることは、お金の節約にもつながるという。
「40代を過ぎると体に不調が出やすくなります。仕事上の責任が増えたり、子育てによるストレスだったり。心身共に健康でいないと、医療費もかかるし、仕事を続けられないリスクもあります」
働き盛りの男性は、とくにストレスを抱えがちだ。
「夫のグチを聞いてあげるだけでも男性はストレスが減るもの。ご主人が好きなおかずを作ってあげるだけでも……。ストレスを外で発散しないで、帰宅が早くなれば、ムダ遣いの予防にもなります」
これまで多くの貯蓄達人を取材する中で、お金が貯まっている家庭にはモノが少ないと気づいたという松崎さん。
買っていないからお金が残り、部屋はスッキリ。モノは体験と違って、買うまでがいちばん楽しく、購入して手にした瞬間が幸福度のピークで、その後は下がり続けるという。まずは不要なモノをうっかり買うのをやめることだ。
「クローゼットや部屋の様子をスマートフォンで撮影してみてください。客観的に見ると、いかにモノがあふれているかわかるはず。同じようなものを持っていないか、収納するスペースは本当にあるのかどうか。セール前に、写真を見直すことで、ムダのない買い物ができます」
趣味のグッズやコレクションしているものがあるなら、「ここまでならOK」というエリアを決めるのが鉄則だ。把握できないほどモノがあっても、満足度は低いと松崎さんは指摘する。
「モノが多いこと自体がストレスになります。片づけなければいけないとモヤモヤしますし、捜し物が見つからない、掃除するのもおっくうになる。モノを少なくして、自宅をきれいにしてみましょう。すると、それを維持したいという気持ちが生まれて、ムダなものを買わないようになるはずです」
いまはゴミを処分するにもお金がかかる時代。子どもが独立して夫婦2人暮らしになったころには、少しずつ不用品を手放したい。
「知り合いが家中の不用品の処分を専門業者に頼んだところ、30万円の費用が必要だったそう。いまのうちに、買うものを減らし、モノを減らすことがゆくゆく大きな節約になるかもしれませんよ」