「更年期の頭痛や肩こり、肌荒れや慢性疲労、イライラや不眠などの不快な症状は、昔に治療した銀歯が原因かもしれません」
こう話すのは、横須賀歯科医院院長の横須賀正人先生だ。更年期に多く現れ、さまざまな体の不調を引き起こす不定愁訴。ホルモンバランスの乱れとあきらめて、我慢している人も多い。
そんな不調は、虫歯の治療として、歯にかぶせられたり詰められたりした銀歯が引き金になっている可能性があるという。
「銀歯は、長い時間、唾液にさらされることで金属イオンとなって溶け出し、血流に乗って全身を巡ります。体内で、金属イオンは異物として認識され、金属アレルギー反応が起こり、いろんな症状が出てきます。銀歯を除去することで、肌荒れや片頭痛などの不定愁訴がなくなったという事例がたくさんあるのです」(横須賀先生・以下同)
虫歯の治療で、かぶせられた銀歯。その下で、ジワジワと歯がむしばまれていることも――。
「細かい加工ができる金歯と違い、銀歯は硬くて細工が難しい。そのため、歯の形状にぴったり合わずに、最初から段差ができてしまうことがあります。また装着する際に使用する接着剤についても、数年たつと口の中で溶けてしまうので、隙間ができる原因に。そこから細菌が侵入すると、虫歯が再発する“二次カリエス”が起きてしまいます」
やっかいなのは、銀歯に隠されて、外見からは虫歯に気づきにくいことだ。
「痛みが出たり、しみたりすれば、二次カリエスでも、気づくことができます。しかし、注意してほしいのが、前の虫歯の治療で、神経を抜いているケース。痛みがないため虫歯が進行。結果的に、せっかく残した歯を抜かなければならなくなることもあります。また、銀歯にできた隙間には汚れがたまりやすいため、病原菌が増殖し、歯周病になりやすくなります。歯周病は歯が抜けるだけでなく、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病などの重い病気との関連性も指摘されていますし、骨粗しょう症の発症リスクを高めることも明らかになっています。朝起きたときに口臭があったり、最近、歯に物が詰まったりする人は、とくに気をつけてください」
すでにしっかり治療したと思っていた銀歯が新たな病気を引き起こすとしたら、皮肉な話だ。