江戸時代から現代までの“おみやげ”を一堂に展示した「ニッポンおみやげ博物誌」(千葉県・国立歴史民俗博物館、9月17日まで)が話題に。そこには、今では“いやげ物”なんて言われることもある、昭和の家には必ずあったおみやげの数々が。その隆盛から衰退までを振り返る。
「かつて多くの家庭には家族の思い出と記憶をとどめるために、玄関や応接間などにおみやげを飾るスペースがありました。しかし、今では居住空間の変化とともに、残念ながら昭和みやげたちの居場所が少なくなってしまいました」
そう語るのは、国立歴史民俗博物館に勤務する川村清志さん。現在開催中の企画展示「ニッポンおみやげ博物誌」で紹介されている昭和みやげの多くは、誰もが「ウチにもあった!」「修学旅行で買った!」と親しみと懐かしさを感じるものばかり。
戦後、多くの人たちが旅行の記念にこぞって購入するおみやげの代表格が、こけし、だるま、土鈴、アイヌ細工、赤べこなどの「郷土玩具」だった。
「アイヌ細工で言えば、今では大きな木彫りのクマを買う人は少なくなっていますが、小さなかわいい木彫りのフクロウは女性客に人気のようです。アイヌ神話でフクロウはコタンコロカムイといって、村の守り神なんですよ」(川村さん・以下同)
もちろん今でも、ハイレベルなアイヌ細工を作る職人はたくさんいる。アイヌ細工はおみやげのみならず、アートとして残すべき貴重な日本の文化財のひとつなのだ。
また、壁に画びょうを刺して貼り並べられた観光ペナントや通行手形、和室の鴨居にズラーッと飾られていたちょうちんにも、ノスタルジーを抱く人は多いだろう。
「観光ペナント、ちょうちん、通行手形は、はやったのも廃れたものほぼ同時期です。いずれも最盛期は’70年代。ターゲットは主に修学旅行に来た男子学生たちでしょう。全国の観光地の地名が入った同じ形状のおみやげは、コレクター気質をかきたて、コンプリートを目指して、多くの少年たちが収集に熱中したものでした」
現在ではすっかり見かけなくなった昭和みやげも、実は意外な形で生き残っている。
「最近の人気みやげは、マグネットとクリアファイル。実は今、ペナント型や通行手形型のマグネットがたくさん売られているんです。昭和みやげはコンセプトやデザインが新しい人気みやげに引き継がれているんですよ。実用的なクリアファイルは、江戸時代からのおみやげの基本『重くなく、かさばらず、日持ちのするもの』と同じ概念。今後、おみやげは基本に戻っていくのかもしれませんね」