「近年では共働き夫婦の増加にともない、親世帯からのフォローを期待した『近居』や『二世帯同居』の割合が増えていますが、ひとつ屋根の下で大家族がわいわい暮らすといった、昭和の“べったり型”同居は、減ってきているという印象です」
こう話すのは旭化成ホームズ株式会社の研究機関である二世帯住宅研究所の松本吉彦所長。ちなみに同社の主力商品である「ヘーベルハウス」が二世帯住宅の販売を開始したのは’75年のことで、「キッチンが2つある間取り」と定義している。
松本所長によれば、’15年に実施した、初期の二世帯住宅居住者への調査では、「二世帯住宅にしてよかった」という回答が9割を超えていたそうだが、さらに翌’16年におこなった別の調査では、じつに興味深い結果が出たという。
「玄関や生活スペースを別々にした、いわゆる“分離型”の二世帯住宅のほうが、親世帯と子世帯の会話の密度が濃くなっていたんです」(松本所長・以下同)
親子二世帯での同居というと、生活スペースを共有する“べったり型”をまだまだイメージしがちだが、実際には、スープが冷めない程度の“適度な距離感”での同居を選択するケースも出てきているのだ。
とはいえ、二世帯同居では必ず「元他人」という存在が生まれてしまう。そこから派生する、いわゆる「嫁姑バトル」や「マスオさん状態」を考えると、“適度な距離感”はそれほど簡単には保てないような気もするのだが……。
「ひと昔前は、同居するとお嫁さんがいじめられたり、お婿さんの肩身が狭くなるという話がありましたが、最近同居を始めた方では、そうしたケースは少なくなっているようです。おそらく、現在の親世代には核家族の第一世代が多いので、子世帯を尊重する意識が強いのでしょう」
さらに、ニーズの増加にともない、二世帯住宅自体が進化していることも、同居を成功させるための大きな要因になっている。
二世帯住宅の構造は、主として「共用二世帯1階に共用玄関(世帯別に各階に分かれていく)」「独立二世帯(内階段型)」「独立二世帯(連棟型)」「独立二世帯(外階段型)」の4つのタイプに大別されるが、同居する両世帯の人数や年代、ライフスタイルに合わせたタイプの住宅を選ぶことで、より円滑な同居生活を送れるというわけだ。
「ひと口に二世帯といっても、各家庭のニーズは異なります。たとえば、世帯ごとのプライバシーを重視するのであれば独立二世帯がいいでしょうし、将来的に親世帯の介護を視野に入れているなら、行き来のスムーズな共用二世帯にしておいたほうがあとあと便利でしょう。このように、それぞれの事情に合った住宅を選ぶことも、これからの二世帯同居には欠かせないポイントだと思います」