10月18日、がんに関する発表があった。’16〜’17年の2年間にがんになった20〜39歳の約8割が女性で、その原因は子宮頸がんや乳がんの増加にあるというのだ(国立がん研究センター・国立成育医療センター)。こうしたデータを見ると、「娘もがん保険に加入させなきゃ」と思う人もいるかもしれないが、本当にがん保険は必要なのか。経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。
■1回3,349万円の新薬が約40万円に
3つのポイントを見てみましょう。
【1】データの分析
まず、20〜39歳でがんになる割合を考えましょう。20〜39歳の人口は約2,860万人に対して、がんになった方は約1万8,000人。つまり、がんになるのは20〜39歳の0.06%と少数です。(’15年・国立がん研究センター)。若いがん患者の約8割が女性とは驚きですが、実は、レアケースの内訳だと冷静に受け止めましょう。
【2】がんの治療費
がん治療は高額になるイメージがありますが、実際のところは?
たとえば乳がんの方の入院費用は平均約74万円です(’18年度・全日本病院協会)。3割負担だと約22万円になりますが、高額療養費制度を利用すると、自己負担は一般的な収入の方で月9万円ほど。
ただ「先進医療が必要になったら、保険適用外だから高額になる」と心配する方もいるでしょう。しかし、先進医療はどんどん保険適用に組み込まれてきています。
たとえばオプジーボ。当初は患者1人当たり年間3,500万円かかると話題になりましたが、’14年から保険適用になりました。’16年からは重粒子線や陽子線の治療が、今年5月には1回3,349万円の白血病治療薬キムリアにも保険適用が広がっています。さらに来年度中には、遺伝性の乳がんの再発予防治療も保険適用になるようです。
保険適用になると、高額療養費制度が利用できます。超高額なキムリアも、自己負担は約40万円に抑えられます(一般的な収入の方)。
安全性や治療効果などが定まった先進医療は、保険適用に格上げされるため、ほとんどのがん患者は保険のきく治療を受けています。
【3】医療保険やがん保険の給付金
がんで入院したら、給付金はいくら受け取れるのでしょう。
最近の保険料が手ごろな医療保険は、入院給付金が60日までというものが多いです。とすると、入院日額1万円としても、最大60日分で60万円。これに手術一時金が20万円付いても、受け取る給付金は合計80万円。この程度なら貯金でまかなえる方も多いでしょう。
また、がんの平均入院日数は16.1日で、乳がんだと11.5日です(’17年・厚生労働省)。入院期間が短いので、入院給付金も少なくなります。
保険はがんにならないお守りなどではなく、単純にお金の備えです。加入には、治療費と自分の貯蓄、支払う保険料と受け取る給付金などの比較検討をしてください。
若い女性にがんが多いというのは心配です。若いからと油断せず、早期発見のため、みんなでがん検診を受けましょう。