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「現代は飽食の時代ですから、昭和のころに比べて、肥満や高血圧、糖尿病の女性は増えています。とくに女性ホルモンの分泌が低下する50代以上は動脈硬化が進みやすいので、心不全による突然死、『急性心臓死』に注意が必要です」

 

そう話すのは、心臓血管研究所所長で医学博士の山下武志さん。先月も、俳優の木内みどりさん(享年69)が、急性心臓死によって突然死したことは記憶に新しい。木内さんは仕事先での夜の懇親会後、歩いてホテルに戻った数時間後に亡くなったとみられる。急性心臓死とはどんなものなのか。山下医師はこう語る。

 

「症状が出てから24時間以内に亡くなることを突然死と言いますが、病院に着いたときには、だいたい亡くなっています。診たところ、くも膜下出血などの脳の病気ではないので、原因は心臓にあると判断することが多いのです。そんな急性心臓死につながる不全の原因は、不整脈や弁膜症、狭心症などいろいろ。なかでも、50代以上で多いのは心筋梗塞です。木内さんの場合も、その可能性が高いと思います」

 

心筋梗塞は、初期の段階で心臓の冠動脈が詰まったり硬くなったりして、心臓のポンプ機能が低下する。そうすると必要な酸素や血液が心臓の筋肉に送られにくくなり、心筋の一部が壊死して発症する。

 

「水道管が少しずつ錆びついていくように、動脈硬化も加齢とともに20~30年かけて徐々に進行していきます。しかし、目立った症状がないことも多く、気づきにくいのです」

 

とくに、冬場は血圧が上昇しやすく、暖かい部屋から寒い場所へ移動する際にかかる心臓へのストレスにより、心筋梗塞になりやすくなるから注意が必要。心筋梗塞が突然死につながるのは、次のようなケースだ。

 

「心筋梗塞が起きると急に胸やみぞおちが圧迫されたように痛くなりますが、安静にしていれば治まることが多い。突然死に至るのは、心筋梗塞によって“心室細動”という不整脈が起きた場合です」

 

心室というのは、心臓から血液を送り出す小部屋のこと。そこが小刻みに震えて血液を送れない状態になることを心室細動という。

 

「心室細動が起きて1分経過するごとに生存率が10%下がります。10人に1人が医療機関にたどり着く前に亡くなってしまいます」

 

心室細動が起こると、ただちに意識がなくなるため、自分で救急車を呼ぶこともできない。

 

「おそらく木内さんも、すぐ意識がなくなってしまったのではないでしょうか……」

 

つまり、急性心臓死を避けるためには、心室細動が起きる前の心筋梗塞の段階で、治療を受けるしかないのだ。怖いのは心筋梗塞のリスクが高まっていても、自覚しにくいことだ。そのなかでもわかりやすい予兆を、山下医師が教えてくれた。

 

「心筋梗塞を起こす直前の心臓は、だんだんパワーが落ちてくるんです。そうすると息切れしやすい、歩くスピードが落ちてきた、などの症状が出てきます。これは、心臓の冠動脈が詰まって、十分に酸素や血液が送り込まれなくなっているからです」

 

「女性自身」2019年12月24日号 掲載

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