「冬でも家の中には、湿気の多い、カビの好む場所があります。免疫力の落ちた人がカビを大量に吸い込むと、アレルギーや、ひどいと肺炎を引き起こし、死に至ることもある。ただの汚れと放置しては危険です」
こう話すのは、千葉大学真菌医学研究センターで、生活環境や病気を引き起こすカビについて研究する矢口貴志准教授だ。そこで、矢口先生のお話をもとに、冬にも気をつけたいカビが潜む場所や人体へのリスクを解説してもらった。
寒い毎日に欠かせないエアコンには、家の中でもっとも危険なカビが潜む。
「エアコンのフィルターには、ホコリを好むアスペルギルスという黒カビがよく生えています。大量に吸い込むと、アレルギーはもちろん、免疫力が落ちている人は重篤な肺炎を発症することもあります」
このカビの胞子は血液に入って全身に広がることも。脳に回れば、頭痛や意識障害を、肝臓では、肝硬変を起こすこともあり、最悪の場合は死に至るという。
「夏から一度も掃除をせずにエアコンを使えば、秋のあいだに繁殖したこのカビを、部屋中にまき散らすことになってしまう。高齢者やがんで自宅療養中の人などが暮らす家庭では、エアコンのフィルターをこまめに掃除して、できるだけカビが広がらないようにしてください」
ほかにも、季節は関係ないが、気づかぬうちにカビが繁殖してしまう場所があるという。
「石けんカスが飛び散る水道の蛇口や、冷蔵庫にある自動製氷機の給水タンクとフィルターは、こまめに洗わないと、エクソフィアラやオーレオバヂウムなどの黒カビが発生。水や氷とともに、こうしたカビを体内に取り込み続けると、おなかを壊す人がいます。また、ペットの犬や猫に脱毛が見られたら、ミクロスポルムというカビが発生している可能性も。人に感染すると、強いかゆみを伴う湿疹ができてしまいます」
最後に、矢口先生はカビから身を守るには、やはり掃除が大事だと教えてくれた。
「ホコリや結露を放置しないことです。天井の掃除も忘れないでください。カビの胞子が天井に付着していると、いくら掃除しても、胞子が落ちて、またカビが繁殖してしまいます」
健康のためにも、今年の大掃除はカビ退治を忘れずに。
「女性自身」2020年1月1日・7日・14日号 掲載