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「安部首相が’12年にアベノミクス政策を提唱して以降、物価は上がり続けています。その上がり幅に賃金上昇が追いつかず、『実質賃金』はマイナスを示す月が多かったのですが、’19年に入って以降は、会社(雇用主)から支払われる賃金額を示す『名目賃金』もマイナスを示す月が増えました。この流れは’20年も変わらないでしょう」

 

’20年の社会とお金の動きについて、こう語るのは、経済評論家の加谷珪一さん。

 

「’19年10月の消費増税前後の小売業の販売額を前年同月と比較してみると、9月の『駆け込み需要』による9.2%増から、10月はいきなり7.1%減と、大きく落ち込みました。前回’14年の増税時は、前の月が11%増で、増税当月が4.3%減でしたから、今回のほうが増税の影響を大きく受けたといえます。年末商戦から年明けにかけても『消費冷え込み』傾向が続くでしょう」

 

消費の大きな低迷を受けて、物価は上昇率こそ緩やかになったが、上昇傾向に変わりはないと加谷さん。

 

逆に、物価の変動を考慮した、給料の実質的な価値を示す「実質賃金」ばかりか、実際にもらえる金額である「名目賃金」までマイナスになる月が増えてきていて、かなり厳しい状況は続くという。

 

「名目賃金もマイナスで発表され始めた要因としては、会社が募る『早期退職』に手を挙げて大幅に収入減となったり、50代以降などに管理職から外れる『役職定年』で、それまでの収入を維持できず、ガクンと落ちたりする人が、増えていることも大きいでしょう」

 

そんな経済苦境のなか、’20年は続々「お金関連の法律」が施行されていくというから、見過ごすわけにはいかない。4月から9月までの主な「お金関連の法律」は次のとおりだ。

 

■4月

 

【マクロ経済スライド発動で年金減!】

「現役世代の人口減少に合わせて年金の給付額が変わるのが『マクロ経済スライド』。’19年に4年ぶりに発動されましたが、物価の上昇に比例した給付額にならず実質的には『減額』でした。’20年も2年連続の発動が確定的。物価は緩やかに上がっているものの、給付額は横ばいになる可能性が高く、『年金減額』が’20年も続くことになります」(加谷さん)

 

【「つみたてNISA」の期間延長】

「最大20年間、非課税投資枠の上限が年間40万円で続けられる、積み立て型の少額投資非課税制度。’37年までだった期限が5年間延長され、’23年までに投資をスタートすれば、20年間の非課税投資期間を確保できます」(加谷さん)

 

【大学の授業料無償化スタート】

「大学授業料無償化は『年収380万円以下』の低所得者世帯が対象となっていて、授業料が最大70万円(私立)、54万円(国公立)免除、入学金が最大28万円免除になります」(加谷さん)

 

【遺産相続における「配偶者居住権」の新設】

「超高齢社会で、残された配偶者も高齢ということが増えています。その生活保障を図る意図などから、『配偶者居住権』が設けられました」

 

こう話すのは弁護士の松下真由美さん。

 

「相続人が高齢の妻と娘で、2,000万円の価値の家と2,000万円の預貯金の計4,000万円が遺産だとします。現行法では妻が家に住み続けるためには2,000万円の家を相続する必要があり、それだけで法定相続分(遺産の2分の1)となって、預貯金は1円も相続できません。これが改正相続法では、配偶者居住権が仮に1,000万円の価値だと、預貯金も1,000万円相続できることになります」

 

【月末でキャッシュレス決済のポイント還元終了】

「2%や5%の還元がなくなると、消費税が10%になった実感が湧くはず。ポイント還元終了前に、駆け込みでまとめ買いをするなら、失敗しないよう計画的に」(ファイナンシャルプランナー・中村 薫さん)

 

■7月

 

【夏のボーナスは期待薄】家電買い換えは“待ち”が正解。そのぶん貯蓄や投資へ

「’20年3月期の企業業績は、多くが『減益』となる可能性が高い。経団連が『終身雇用の見直し』を打ち出し田植えでの春闘となるので、夏のボーナス支給額交渉の見通しは厳しいですね。家電などの小売店側は、東京オリンピック前の『いまがラストチャンス!』などと、大画面テレビなどAV機器を売り込んでくるでしょうが、’20年前半は買い控えたほうがいいでしょう」

 

こう話す加谷さん。好機は冬のボーナス時と見る。

 

「五輪後の不況をメーカーも小売店も危惧していますので、冬商戦は安くなるはず。そこまで大型家電購入は“待ち”でいいでしょう」

 

■8月

 

【東京オリンピックが終わると……】消費低迷による不景気で、さらなる収入減の悪循環に

「物価の上昇は依然続いています。しかし賃金はその上昇分についていけず、’19年は『名目賃金』もマイナスという月が多かったんです。’20年は『同一労働同一賃金』や『残業代カット』などで、社員の賃金がさらに下がると見込まれますので、そのぶん、消費は低迷する可能性が大きいと思います」

 

こう消費の低迷傾向を見通す加谷さんだが、一方の不動産価格は、次のように捉えている。

 

「’19年からマンションは売れ残り物件が出ているので、完全に販売不況と言えるのですが、首都圏のマンションは、まったく下がる気配を見せません。その理由は、資材価格、建設コストの高値が続いていることに加え、首都圏や地方中核都市への人口流入は加速していて、まだマンションが『足りない』状態だから。デベロッパーは『時間をかければ高値で売り切れる』と考えているんです」

 

高値が続く「都市部の物件」と、下落が止まらない「郊外の戸建て」で、不動産価格の二極化が進むとみている。

 

【マイナンバーカードで25%ポイント還元スタート】

「マイナンバーカード所有者に、9月から『25%ポイント還元を行う』と政府が発表しました。期間は’21年3月までといわれていますが、詳細はまだわかりません。発行のためにかかる手間に加え、個人情報流出の恐れも考慮すれば、『25%還元』というアメが甘いかどうか……考えるべきですね」(加谷さん)

 

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「女性自身」2020年1月1日・7日・14日号 掲載

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