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「日本では年間、約8万7,000人が乳がんと診断され、1万4,000人以上が亡くなっていますが、患者のうち約10%は進行の早い遺伝性の乳がんだと考えられています」

 

こう話すのは、株式会社ゲノムクリニック代表取締役で婦人科医の曽根原弘樹先生。

 

「一般的な乳がんは、厚生労働省が40代以上に推奨する2年に1度の検診でも、ステージ1の状態でよく見つかりますが、遺伝性の場合は、1年でステージ2になることがあります」

 

発症年齢も早くなるようで、通常は30代後半から多くなるが、遺伝性だと20代でもなりやすい。

 

「さらに、ふつうは乳房の片側だけに腫瘍ができることが多いのですが、遺伝性の乳がんは両胸に、同時にできることもあるんです」

 

とても厄介な遺伝性の乳がん。しかし、曽根原先生は「遺伝性」だからこそ、対策できることもあるという。

 

「この乳がんは体の設計図である遺伝子のうち、乳がんと深く関わる遺伝子が壊れている人が発症しやすい。言い換えると、壊れているかどうかを調べれば、罹患する前から発症リスクを知ることができるということです」

 

そこで先生が始めたのが、遺伝性乳がんリスク検査サービスだ。

 

「検査では、唾液から抽出した遺伝子を解析して異常がないかを調べます。検査期間は1〜3カ月。壊れていたら陽性で、発症リスクは最大で約70%になる。欧米の調査だと、約100人のうち1人には変異があるとの報告があります」

 

検査では遺伝性の卵巣がんのリスクもわかるという。

 

「卵巣がんも同じ遺伝子が密接に関与しているからです。陽性だった場合、最大発症リスクは約50%程度です」

 

株式会社ゲノムクリニックのホームページと取材をもとに編集部が作成した発症リスクが次のとおりだ。

 

【乳がん】

一般的な日本人:9%
乳がん遺伝子を持っている人:最大約70%

 

【卵巣がん】

一般的な日本人:1%
乳がん遺伝子を持っている人:最大約50%

 

アメリカではハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが同様の検査を受けて、「陽性」と判定され、’13年に両乳房の予防切除を、’15年には卵巣と卵管の切除を行っている。

 

「彼女には、家系内に複数の乳がん・卵巣がん罹患者がいる濃厚な家族歴がありました。この検査は、医療機関でも受けられますが、対象は濃厚な家族歴のある人だけ。しかし、家族に乳がん罹患者がいなくても、突然変異で遺伝子が壊れていて、発症リスクが高い人もいる」

 

そこで、曽根原先生は濃厚な家族歴がない人でも検査を受けられるようにした。

 

「これまでに約50人が検査を受けましたが、全員『陰性』でした。『陽性』の判定が出た場合は、ステージ1で見つけられるよう、乳がん・卵巣がん検診の間隔を半年に1回行うことを推奨しています」

 

さらに、曽根原先生はより多くの人が使いやすいように、サービスの利便化も図る。

 

「現段階では、検査スタッフと対面しないと検査を受けられないので、遠方に住む人も自宅で受けられるように、唾液は郵送でやり取りして、カウンセリングは電話で行うサービスを計画しています。倫理委員会から許可が下りれば、年内にもスタートさせようと考えています(※)」

 

早期発見できれば、生存率は高まる乳がん。一度、リスク検査を受けるか検討してはどうだろう。

 

※現在、対面方式の検査料は3万9,500円(税別)。郵送方式の料金はまだ決まっていない。

 

「女性自身」2020年2月4日号 掲載

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