サプリさえ飲んでいれば健康になれる。そう安易に思い込んでいると、いつしかサプリが体をむしばむ“毒”になってしまうかもしれないーー。
「自分の健康状態を把握せずにサプリを飲みすぎてしまうと、思わぬ“落とし穴”にハマることがあるのです」
そう語るのは『医者が教える「あなたのサプリが効かない理由」』(イーストプレス)の著者で、サプリをつかった栄養療法を行っている医師の宮澤賢史先生。内閣府の調査(’12年度)によると、日本人の約5割が2種類以上のサプリを利用している。そして、年齢が上がるほど、飲むサプリの種類は増える傾向にあるという。
同調査では、病院で処方される薬とサプリを併用している人はおよそ3割。しかも、そのうち8割の人は、医師にサプリの使用を伝えていないということが判明している。
「医師からの処方薬を服用しているときに、サプリも摂取してしまうと、治療薬の効果を阻害してしまうだけでなく、もともと抱えていた病状が悪化する可能性さえあるのです。たとえば、コレステロールを下げる処方薬を服用している人が、同じくコレステロールを下げる効果を持つ紅麹のようなサプリを過剰に摂取すると、コレステロール値が著しく低下し、その副作用としてうつ症状を起こす危険性が高くなります」(宮澤先生)
そこで本誌は、国立健康・栄養研究所、愛知県薬剤師会薬事情報センターのデータや、宮澤先生ら専門家の協力をもとに、“危険なサプリの飲み方”を次にまとめた。こんな時、このサプリを飲むのは危険!
【血圧を下げる薬を飲んでいる】サプリの種類:カプサイシン(ダイエット)
降圧剤(ACE阻害薬)を飲んでいる場合、ダイエットのためにカプサイシンを摂取してしまうと、咳が誘発され止まらなくなることがある。
【コレステロールを下げる薬を服用】サプリの種類:紅麹(コレステロール低下)
同じくコレステロール低下をうたう紅麹サプリと併用すると、効果が強く出すぎ、肝障害やうつなどの症状を引き起こすリスクがある。
【利尿剤を飲んでいる】サプリの種類:ビタミンC(栄養補給)
利尿剤(ダイアモックス)とのビタミンCの併用で腎・尿路結石のリスクが上がる。
【血液をサラサラにする薬を飲んでいる】サプリの種類:ビタミンE(抗酸化作用)
抗血栓薬(ワーファリン)と、ビタミンEの大量併用によってかえって出血しやすくなるという報告が。また、健脚づくりを助けるとされるグルコサミンサプリも抗血栓薬と併用すると作用が減弱する。
【鎮痛薬としてアスピリンを常用している】サプリの種類:イチョウの葉(認知機能向上)
解熱鎮痛薬(アスピリン)とイチョウの葉サプリを併用することで、サプリの作用が減弱する。
【喉が腫れて熱っぽい】サプリの種類:鉄(貧血対策・栄養補給)
体内に炎症(発熱、ケガ、脂肪肝、副鼻腔炎、喉や歯の炎症など)があるとほぼ全てのサプリの効果は減弱する。とくに鉄は代謝の悪化および身体機能の低下を招くおそれがある。
【しつこい疲れが取れない】サプリの種類:プロテイン(タンパク質摂取・筋力増強)
疲れは強いストレスによる副腎疲労の可能性もあるため、タンパク質摂取が正しいとは限らない。また、タンパク質の過剰摂取を招き、内臓疲労の原因にも。
【下痢や便秘を繰り返している】サプリの種類:プロテイン(タンパク質摂取・筋力増強)
腸内環境が悪化している場合はほぼ全てのサプリの効果が半減。タンパク質の塊であるプロテインは消化不良を起こし、症状の悪化を招くことも。
【お酒を飲む前はいつもウコンを飲んでいる】サプリの種類:鉄(貧血対策・栄養補給)
ウコンには鉄分が含まれており、鉄分が過剰に肝臓に蓄積。肝障害を悪化させる可能性も。
【母親や祖母が乳がんにかかったことがある】サプリの種類:イソフラボン(エイジングケア)
女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをするイソフラボンのサプリ。乳がん発症リスクを上げるかもしれないといわれており、当てはまる人は摂取を控えたほうがいい。
では“正しいサプリの飲み方”とはなんなのだろうか。宮澤先生は症状に合わせて、適切な栄養素を選ぶ重要性を語る。
「まずは検査をして、自分に不足している栄養素を突き止めることが大事です。たとえば、慢性疲労に当てはまる人であれば、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB群などの栄養素が足りていないので、必要に応じてサプリで補うように、と指示することができます。決して、自己判断だけでサプリを飲もうとしないこと。医師としても、患者が自己判断でサプリを飲んでいることを知らなければ、検査の数値が上下したとき、その原因がわからず、正確な診断を下せません。どんなサプリを取ればよいか、そればかりを気にしている人は多いですが、いちばんの理想は、サプリがいらない体になること。これを忘れないでください」
「女性自身」2020年2月4日号 掲載