自覚症状のないまま悪化し、さまざまな病気を引き起こす原因にもなる高血圧。女性は更年期を迎えるころから特に注意が必要だ。’17年に厚生労働省が行った健康調査によると、日本で高血圧と診断を受けている人は約994万人。しかし、実際は約4,300万人が高血圧だという推測もされている。
「更年期の女性は、女性ホルモンが減少すると同時に血圧が上がり始める傾向にあります。女性ホルモンは血管を拡張させる働きをしてくれるため、『若いころは低血圧気味だった』という人も少なくありません。しかし、そういう人でも、更年期を経ていつの間にか血圧が上がっていたということがよくあります」
こう話すのは、循環器疾患が専門で「ミスター血圧」の異名をとる渡辺尚彦先生だ。渡辺先生は常に血圧計を腕につけ、自身の血圧をじつに24時間32年以上にわたって測り続けている。患者さんに対しても、エビデンスとなるデータをとりながら、薬に頼らないさまざまな降圧方法を模索している。
渡辺先生は、さまざまな生活習慣の中からも、降圧効果のある方法を探し続けている。
「これまで試してきた中で、もっともわかりやすく効果が表れたのが“歩くこと”でした」
1日2キロから始めて、4キロあたりから徐々に血圧が下がってきたというケースが続出。
「降圧剤を4剤から3、2、と減らし、最終的には0.5剤にすることに成功した人もいます」
ほかにも、日常生活のなかで気軽にできる降圧ワザはたくさんある。運動が苦手という人は、階段を下りるだけでいい。もっとズボラな人には、ラベンダーの香りをかいだり、昼寝をする、ぬるめの入浴などでも効果が望める。
【階段を下りる】
高めの血圧を改善するのに適度な運動が効果的だが、階段を上がる運動に抵抗がある人は、まず下りのみエスカレーターではなく階段を使う生活を心がけてみよう。日ごろ使っていない筋肉を刺激することもできるなど、メリットはたくさん。
【ラベンダーの香りをかぐ】
香りをかぐことで、鼻から脳に刺激が入り、リラックス効果があるとされているアロマセラピー。さまざまな香りがあるが、血圧を下げるのにもっとも適しているのはラベンダー。α波を増加させて血圧を下げる作用がある。
【15分の昼寝】
睡眠不足も血圧を上げる原因の1つ。日ごろから寝不足気味だという人は、休憩時間などに15分程度の昼寝をすることで、血圧の上昇を防ぐことができる。また、脳が活性化し、午後の作業効率が上がるという効果、夜の睡眠の質を高めるメリットも。
【ぬるめのお湯で入浴】
熱いお湯はヒートショックの原因になるので、39〜40度くらいのぬるめのお湯にゆっくりつかること。いきなり湯船に入るのではなく、足先からゆっくりとつかるようにすることでリラックス効果を高めることができる。
【自然の音に耳を澄ます】
小鳥のさえずりや風の音、川のせせらぎや波の音など、自然の音に耳を傾けることには、副交感神経を優位にし、気持ちを落ち着かせる働きがある。このとき、血管が拡張され、血流も促進される。日常で長時間にわたって緊張状態にいる人にとっては癒しにもなる。
【ゆっくり深呼吸】
交感神経が優位である時間が長い人は、全身の筋肉も硬く、呼吸が浅くなりがち。数分間の深呼吸をするだけで、副交感神経が優位になって、緊張がほぐれる。一時的に血圧を下げる効果が確認されている。
「ストレスは血圧を上げる要因です。必要以上に激しい運動をしたり、運動嫌いの人が苦手なことを無理にやろうとすると、そのストレスからかえって血圧を上げてしまうことになりかねません。それならば、リラックスして落ち着ける環境にいるほうが、血圧を上げないためには好ましいのです」
いずれのワザも、継続して取り入れることがカギ。習慣化できるように努めよう。
「女性自身」2020年2月11日号 掲載