私たちの身近な食品の多くに使用されている添加物。それを知らず知らずのうちに取りすぎると、体の大切な機能をつかさどっている器官に負担をかけてしまう恐れがーー。
「これまでにもさまざまな機関の研究で、食品添加物の発がん性などが問題視されてきました。近年、着色料や保存料、人工甘味料などから、腸に悪影響を与える物質が海外で続々と報告されています」
こう話すのは管理栄養士の圓尾和紀さんだ。腸内細菌は私たちの免疫力をコントロールしてくれるなど重要な存在であることがわかってきているが、その腸内細菌が、食品添加物によって脅かされてしまうのだという。
「よい腸内細菌が活発になれば、体が元気になります。逆に腸内細菌が減退すると、病気や精神的に落ち込む原因となるなど悪影響が出てきます。腸内細菌が私たちの健康をコントロールしているといっても過言ではありません。現在の日本では多くの食品に食品添加物が使われています。保存期間が長いもの、彩りが鮮やかなもの、カロリーオフをうたうものなどを食べすぎると、腸内環境が悪化し、免疫力の低下を招いてしまうのです」(圓尾さん・以下同)
こうした腸内細菌にダメージを与える食品添加物は、私たちが日ごろから何げなく食べているものに多く含まれているという。
腸内環境を特に悪化させることがわかっている食品添加物は、人工甘味料、保存料、発色剤、乳化剤。
「食品の細菌の増加を抑える保存料は腸まで届き作用する可能性があります。このとき腸内細菌が殺されてしまったり、生成が阻害されることも考えられます」
【保存料】食品の腐敗の原因となる微生物を抑制し、保存性を高める
<添加物名:ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム>
添加されている主な食品:魚肉練り製品(かまぼこ、ちくわ、はんぺんほか)、食肉製品(ハム、ソーセージ、ベーコン、焼き豚ほか)、あんこ、漬け物、ワイン、プロセスチーズ、ジャム、煮豆、つくだ煮など
<添加物名:デヒドロ酢酸ナトリウム>
添加されている主な食品:プロセスチーズ、バター、マーガリンなど
<添加物名:安息香酸、安息香酸ナトリウム>
添加されている主な食品:マーガリン、スポーツ飲料、エナジードリンク、ガムシロップ、醤油、濃縮果汁、果実ペースト、ピューレなど
<添加物名:パラオキシ安息香酸>
添加されている主な食品:醤油、酢、ガムシロップ、濃縮果汁など
<添加物名:ポリリジン>
添加されている主な食品:コンビニのおにぎり、弁当・総菜など
「保存料の成分には細菌の増殖を抑える働きがあるため、腸内細菌の数や菌種の多様性が減少する恐れがあるといわれています。腸内細菌が減少すると、腸内環境が悪化することが考えられえます」
色鮮やかな食品にも危険性が潜む。
「加工肉などに使われている発色剤には防腐剤の効果もあり、これも腸内細菌の生育を妨げる恐れが考えられます」
【発色剤】動物性食品に含まれる赤血球や筋肉細胞の色素と結合して安定した赤色を出す
<添加物名:亜硝酸ナトリウム>
添加されている主な食品:食肉製品(ハム、ソーセージ、ベーコン、焼き豚ほか)、魚卵(イクラ、すじこ、たらこ、明太子ほか)など
「防腐剤には、多くの種類の細菌の育成を抑える働きがあり、これが腸内細菌の育成にも影響を与える可能性が指摘されています」
圓尾さんが特に厄介だと指摘するのはアイスクリームや缶コーヒーなどによく使われる乳化剤だ。
【乳化剤】水に油が溶けたような状態のものにする
<添加物名:カルボキシメチルセルロース、ポリソルベート80>
添加されている主な食品:プロセスチーズ、マーガリン、コンビニの食パン・総菜パン・菓子パン、クッキー、キャンデー、のど飴、プリン、アイスクリーム、缶コーヒーなど
「日本で主に使用される乳化剤は11種類ありますが、そのうちどれを添加しているかを食品に表記することが義務づけられていません。すべて乳化剤と一括表記されているので、食品表示から判断することができないのです。11種類の中には『ポリソルベート80』と『カルボキシメチルセルロース』がありますが、海外で行われた動物実験では、この2つを投与したマウスの腸の粘膜層が破壊され、結腸の長さが2割短くなったという結果が出ています。これにより過食傾向を招き、腸炎やメタボリックシンドロームのリスクが高まることがわかっています。この研究では、乳化剤が腸に影響を及ぼし、クローン病や潰瘍性大腸炎までも引き起こしているのではないかとも示唆されています」
これほど身近に、体に悪影響を及ぼす食品があふれているにもかかわらず、「添加物の使用量は少ないから大丈夫」という人もいる。
「一回一回は少量でも、食べ続けることで腸はボディブローのように徐々にダメージを受けます。食品添加物を完全に避けることは難しくても、少しでも減らす努力はできますから、取りすぎにならないよう気をつけてほしいのです。食品表示の原材料に記載されている点数が多いほど、添加物も多く使われています。同じ食品でも、添加物の表記が少ないほうを選ぶようにするとよいでしょう」
「女性自身」2020年4月7日号 掲載