新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の解除が着々と進む。5月21日に大阪、京都、兵庫の3府県が解除の対象に。5月25日には継続中だった北海道と首都圏の東京、埼玉、千葉、神奈川の計5道都県が解除となり、飲食店やデパートなどの営業も再開され始めた。
そこで、心配されるのが集団感染や第2波の発生。このまま自粛の緩和を進めて、また感染が広がらないのか。不安を感じている人もいるだろう。
「自粛を緩和すれば、少なからず感染者は増えるでしょう。ですが、みなさんがいままでに培った感染予防の意識を継続して持てば、医療崩壊するような感染拡大が起きる可能性は低いです」
こう語るのは感染症専門医でグローバルヘルスケアクリニック院長の水野泰孝先生だ。
「ダラダラと自粛を続ければ、ストレスもたまり続け、メンタルの不調など、健康面で別の弊害も生みます。これから大事なのは感染拡大を防ぎながら、どう新型コロナウイルスと共存するかを考えることです」(水野先生)
京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授の宮沢孝幸先生も共存を考えるのが大事だとうなずく。
「ウイルス研究者の立場からみても、感染拡大の防止と経済活動の両立は可能だと思います。感染を防ぐのはもちろん大事ですが、長引く自粛による景気悪化で失業者が増えるのも問題です」
そこで宮沢先生がSNSなどで強く呼びかけているのが「100分の1予防法」だ。
「手についたウイルスをゼロにしようと、せっけんで念入りに手洗いするのも重要ですが、手についたウイルスが100分の1になるだけでも感染リスクは下がります。100分の1を目指すなら、手洗いは毎日せっけんを使わなくても水洗いで十分。入念に手を洗っても、ウイルスが付着したものを触れば、感染リスクは洗う前に元どおりです。それよりも、こまめに手を洗い、付着したウイルスを減らし続けることが大切です」
水野先生も予防の大原則は手洗いとマスクの着用だと語る。
「当たり前だと思うかもしれませんが、半年前はこれが徹底できていなかったんです。でもいまは、歯磨きやお風呂、女性のメークなどと同じように、手洗いやマスク着用が当たり前のこととして定着してきている。これはすごい進歩。新型コロナウイルスと共存していく今後の生活でも、手洗いとマスク着用を習慣として続けていく必要があります」
では、こうした予防を基本に、私たちは今後、新型コロナウイルスとの暮らしをどう営んでいけばいいのか。日常のシーンごと、先生たちに教えてもらった。
【外食編】
営業を再開しつつあるレストランや居酒屋。店舗では多くの対策がされているが、利用する側は何に気をつければいいのか。
「人との接触を減らすために、個室席を選ぶのは一つの手です。注文する料理はできるだけ定食のほうがいいかもしれません。大皿料理はほかの人と箸でつつき合うこともあり、感染リスクがある。ホテルでは朝食がバイキングから定食になったところもあります」(水野先生)
【病院編】
診察まで長時間待つこともある病院。水野先生は密接や密集を防ぐ工夫が必要だと話す。
「私のクリニックでは現在、診察を完全予約制にして、できるだけ患者さん同士が鉢合わせしないようにしています。電話などで診療直前に呼び出し連絡を入れてもらえるのであれば、それまでは車内や外で待つのもよいでしょう」
通院する時間帯も工夫することで、3密を回避できる。
「施設によって差はありますが、病院の混雑する時間帯は朝いちばん。一方で、すいているのは、午前11時ごろと、午後の診察スタート時です。感染の疑いがある場合は、必ず連絡をしてから行きましょう」
病院でもう一つ気をつけたいのが、不特定多数の使うトイレだ。
「新型コロナウイルスは便からも検出されています。自分が利用する前に感染者が使っていれば、便座などが汚染されているかもしれない。利用はできるだけ控えたほうがいいですが、使用する場合は、その前と後に消毒を必ずしましょう」(水野先生)
【スーパー編】
生活を営むうえで欠かせないスーパー。通う頻度も多く、しっかりした予防法を身につけたい。
「3密を防ぐために入店制限を設ける店もあるでしょう。あるスーパーでは買い物かごを入場券代わりにして、店舗に入れるお客さんの数を制限しているようです。入退店のときは店舗に設置されている消毒液を使って、手をきれいにしましょう。買ったものにウイルスが付着しているのではと、心配する人もいますが、それほど気にしなくてもよいと思います。どうしても気になるなら、常温保存できるものは1日玄関先などに置きましょう。それでウイルスは人に感染できなくなります。野菜は水洗いすれば十分です」(宮沢先生)
【結婚式編】
感染拡大により相次いで延期されている結婚式。宮沢先生は工夫次第で開催は可能だと話す。
「会場に入場する前は参加者にアルコール消毒をしてもらい、マスクの着用をお願いしてください。会話しながらの食事は、飛沫が料理に飛んで、感染リスクが高くなります。そこで、静かに料理を楽しむ食事タイムとマスクしておしゃべりを楽しむ歓談タイムを明確に分けましょう」
感染予防を当たり前の習慣にして、少しずつ元の生活を取り戻す道を探っていきたい。
「女性自身」2020年6月9日号 掲載