「約1カ月半にもおよぶ自粛生活で、4月の外食産業の売り上げは前年比で約40%もダウン。減収を補おうと、多くの店が持ち帰りに力を入れるようになりました。緊急事態宣言が解除されても、すぐにお客さんが元の数に戻るとは考えにくいですから、今後もテイクアウトを強化するお店は増えるでしょう。だからこそ、食中毒が起こりやすい梅雨や夏場に向けて、そのリスクを見抜く目と対策が重要になってきます」
こう語るのは、食品の衛生管理にも詳しいフードジャーナリストの池田恵里だ。『飲食店リサーチ』を運営する株式会社シンクロ・フードが行ったアンケート調査では、飲食店経営者514人の約53%が『テイクアウト販売を始める・または強化する』と回答している。
「ただ現実問題として、コロナ禍で急きょ、テイクアウトを始めた個人経営の居酒屋や定食屋のなかには、衛生面の安全対策がまだ手探りで、危うい状況にある店も見受けられます」
本来、テイクアウトは注文を受けてから調理して、持ち帰り後はすぐに食べるのがベストだ。
「しかし実際は、作り置きの弁当や惣菜を、直射日光が当たる暑くなりやすい店先で一定時間陳列したり、おいしさを追求して、加熱が十分でないレアな焼き加減でおかずを提供するお店もあります。細菌は水分・温度・栄養があるところで繁殖しやすい。とくに30〜37度くらいの気温帯は危険ゾーンです。たとえば腸炎ビブリオの場合、わずか2時間ほどで、1つの菌が発症レベルとなる1万個に増殖するといわれています」
食中毒が起これば店の存続にはもちろん、最悪の場合、食べた人の命の問題にも直結しかねない。東京都福祉保健局・健康安全部の担当者も、つぎのように注意喚起する。
「夏場によく原因となるのは、カンピロバクターや腸管出血性大腸菌のO157、サルモネラ菌などの細菌。潜伏期間は数時間から数日で、主な症状は腹痛や下痢、発熱、悪寒、倦怠感などです。なかには重症化することもあり、O157だと脳障害に発展したり、亡くなる例も報告されています」
こんな悲惨な目にあうのは避けたい。そこで、食中毒のリスクがあるテイクアウトの見分け方を池田さんに教えてもらった。
■ふたの裏に水滴がついている
「透明のふたが水蒸気で曇っていたり、裏側に水滴がついていたりする場合は、調理したおかずやご飯を容器に詰めた後、粗熱をとっていない可能性があります。菌は水分・温度・栄養があると増殖する。ほんの数時間でも水滴がついた状態で常温保存するのはおすすめできません」(池田さん・以下同)
■店内の掃除が行き届いていない
「店の衛生意識は店内の掃除にもあらわれるもの。トイレや床、厨房などがピカピカなのか、チェックしてみましょう。また調理している店員が手袋、マスク、帽子をしているか、弁当は扇風機などで粗熱をとって冷所で保存しているかなども見るべきポイントです」
■気になることは直接、店に聞く
「テイクアウトには表示義務がなく、消費期限などが明記されていないことも多いです。『どのくらいもつのか』『アレルギー食材は使われているのか』などの疑問は、しっかりと店員に聞きましょう」
食べるときにも注意点はあるので、忘れてはならない。
「テイクアウトは、持ち帰ってすぐに食べるのが基本ですが、できない場合は冷蔵庫で保管し、食べる際は必ず殺菌のために、レンジなどで再加熱してください」
「女性自身」2020年6月16日号 掲載