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「今後、新型コロナウイルスに感染したら、いったいいくらかかるのか? と不安な人も多いはず」

 

こう話すのは、医療費制度にくわしいファイナンシャルプランナーの黒田尚子さん。現在、新型コロナに大まかに医療費軽減に使える制度は次の4つ。

 

・公的健康保険(保険適用になる医療費が3割負担)
・確定申告時の医療費控除申請(1世帯の合算で年間10万円を超えた額が医療費控除対象額になる)
・民間医療保険(適用は加入条件による)
・高額療養費制度(1カ月の保険適用医療費が約8万7,000円を超えた場合、払い戻しが受けられる)

 

もし罹患した場合、どのくらいの出費をし、いくら戻ってくるのか、黒田さんに解説してもらった。

 

【1】予防対策費は自己負担

 

「ビジネスのためや遠方の孫に会うため、自費でPCR検査を受け、陰性証明を希望する人が増えています。費用は公的保険がきかないため1万~4万円。価格差が大きいですから、最寄りで検査を実施している医療機関に数軒、連絡して、検査価格を確認し、安い医療機関を選ぶことをおすすめします」(黒田さん・以下同)

 

なお、家庭で使う予防用のマスクや除菌アルコールなども、残念ながら医療費控除の対象外だ。

 

【2】発熱や咳の症状が出たら

 

「とりあえず市販の風邪薬や解熱剤を服用する人も多いでしょう。これは医療費控除の対象なので、レシートは必ず取っておくこと」

 

症状が改善しない場合には、かかりつけ医に連絡後、指定の医療機関で受診することになる。

 

「受診した診察代は保険適用で3割負担。もしその場で、医師がPCR検査が必要と判断した場合には、その病院、もしくは別の医療機関に移動して検査になります」

 

医師の指示による検査は陽性・陰性を問わず無料。またここで、医師から「必ずマスクをすること」と指示があれば、これ以降のマスク代は治療目的で、医療費控除の対象になるという。

 

「コロナの疑いがあると、病院から病院に、公共交通機関は使えません。もし医療タクシーなどを使用する場合は、医療費控除の対象なので領収書をもらってください」

 

医療タクシーは民間会社が運営していて距離にもよるが、1回1万円以上は必要と考えてほしい。

 

【3】PCR検査で陽性になったら

 

検査で陽性になると、自宅待機後、入院治療。軽症のときはホテル療養もしくは自宅療養になる。

 

「現在、陽性のときは、医療費はすべて国費負担になり、治療費だけでなく、入院費、ホテル宿泊費、食費などすべて無料になります」

 

ただ自宅療養の場合は、自治体が支給してくれるケースを除き、食費などは自己負担になる。

 

「陰性の場合は、検査費用はかかりませんが、そこからの治療費は保険診療で3割負担になります」

 

ここで重要な注意点は、万一、コロナに感染した場合、症状が軽くても、コロナの加療はすべて民間医療保険の「入院」に該当し、保険料が支払われることだ。保険の要件が緩和され、医師の診断書があれば、ホテル療養も自宅隔離も含まれることになった。

 

「生命保険文化センターの調べでは、2人以上世帯の世帯主の医療保険(特約含む)加入率は85.1%、配偶者の加入率は69.6%。古い医療保険だと2週間以上の入院から支払われるタイプもありますが、コロナの場合、平均3週間は入院するとされていますので、ほぼ全員、対象になるはずです」

 

多くの医療保険では退院後の通院もカバーされることも覚えておいてほしい。コロナ入院中の医療費は公費負担で無料のため、医療保険の受取金はまるまる手元に残る計算だ。しかし儲かったと思えるほど、コロナの予後は甘くない。

 

【4】コロナ退院後のケア

 

最近、よく耳にするのが、コロナ後遺症の存在だ。重症化して、脳梗塞などを併発する深刻なケースのほか、陰性になっても体力が回復しない、頭痛がするなどの後遺症が報告されている。

 

「病院から『もう退院してもいい』と言われても、まだ体調がすぐれないから、入院を続けたいと延長すると国費負担でなくなります」

 

医療費自体は保険適用3割負担だが、感染の不安から、個室を希望すると、入院費だけでも1日1万円以上の負担に。保険治療は高額療養費制度で一定額以上は戻ってくるが、差額ベッド代などは民間医療保険だけが頼りになる。

 

「また退院したからといって、すぐに社会復帰しづらいのが現状。この生活費に、医療保険で受け取るお金が支えになるはずです」

 

また体調が戻るまで、市販薬を購入したり、通院でのタクシー代などは医療費控除の対象になる。

 

「医療費控除は、自己負担分年間10万円を超えないとだめですが、コロナは一家で感染するケースも多く、合算ができるので10万円を超えるケースがでてくるはず」

 

たとえば通院タクシー代(特に医療タクシー)なども合算できるので、10万円は決して高いハードルではない。コロナ治療関係で使った領収書はすべて取っておくことで、翌年の確定申告の際、還付金が受け取れる可能性が高い。

 

【5】ワクチン接種代はどうなる?

 

今後、期待されているのが、新型コロナ予防のワクチンだ。

 

「現在、インフルエンザなどのワクチンは予防目的なので、保険適用でなく、医療費控除の対象でもありません。ただ今回のコロナワクチンは例外的に国費で負担。無料で受けられる予定です」

 

もちろん、感染しないに越したことはないが、転ばぬ先の杖。きちんと医療費制度を把握して、損しないようにしてほしい。

 

「女性自身」2020年11月3日号 掲載

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