日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる現代社会。がんをはじめ、老化や生活習慣病、アレルギー性疾患、アルツハイマーなど、多くの病気の原因となるのは、「活性酸素」という物質だ。活性酸素は紫外線や放射線、化学物質、呼吸で取り入れた酸素やたばこ、食品添加物、さらにより強くは炎症などに起因して発生し、私たちの細胞や遺伝子を攻撃する。
人間が生きていくうえで、活性酸素が生じるのはやむをえないことだが、私たちを脅かす活性酸素の撃退法があるという。
「猛毒の活性酸素の発生を抑えるには、野菜スープを食べることがおすすめです。野菜には活性酸素を消去する『抗酸化物質』が多量に含まれています。野菜をたくさん食べて抗酸化物質を取り込んでおけば、活性酸素を撃退して、がんやそのほかの病気も予防できます」
そう教えてくれたのは、熊本大学名誉教授の前田浩先生。前田先生の専門は抗がん剤の研究・開発で、ノーベル賞候補にも名が挙がる研究者だ。がん予防の重要性を痛感していた前田先生は、がん発症のしくみを明らかにし、その結果として、「がんの予防には野菜スープがもっとも適している」と太鼓判を押す。
まず、野菜に含まれる抗酸化物質について説明しよう。抗酸化物質には多くの種類があり、その代表格がファイトケミカルだ。ファイトケミカルは植物が紫外線や害虫などから自らを防御するために作り出す物質の総称。野菜や果物、豆類、お茶などの色素、香り、辛味や苦味などを構成する機能性成分のことだ。
トマトのリコピン、ほうれん草やピーマンのルテインなどのカロテノイド、なすやブルーベリーのアントシアニン、大豆のイソフラボン、緑茶のカテキンなど、ファイトケミカルの種類は1万種以上にのぼるという。
「野菜を生のまま食べても、ファイトケミカルはわずかしか体内に吸収できません。ファイトケミカルは野菜の細胞の中にあり、硬い細胞壁を壊さなくては摂取できないのです。ただ、野菜を熱することで細胞壁は壊れます。だから、野菜をスープにすればファイトケミカルがスープに溶け出して、ビタミン類やミネラル類も含めた野菜の有効成分をあますことなく摂取できるのです」(前田先生・以下同)
前田先生が行った実験では、活性酸素を消去するには、生野菜をすりつぶしたものより、野菜を煮出したゆで汁のほうが10〜100倍強いことが明らかになっている。サラダを食べるより、野菜スープを食べたほうが、強力な抗酸化パワーが得られ、アンチエイジングにもなるのだ。
「野菜スープには、野菜の食物繊維が溶け出してきます。食物繊維によって腸内環境がよくなり、免疫の6割を担っている善玉菌が活性化。免疫力がアップします。がんや生活習慣病の予防に加え、コロナ禍における体調管理にも有効だと考えられます」
そんな最強の野菜スープは家庭で簡単に作ることができる。毎日250〜300ミリリットルの野菜スープを1〜2回食べるようにしよう。まとめて多めに作り、3日ほどなら冷蔵庫で保存できる。食べきれない分は1食分ずつ小分けにして、冷蔵庫で保存も可能だ。
【「がんを予防する野菜スープ」の作り方】
(1)玉ねぎ、にんじん、キャベツ、かぼちゃ、セロリ、セロリの葉、トマト、合わせて300グラムと水900ミリリットルを用意する。野菜はよく洗う。
(2)かぼちゃは種を取り除き、トマトはへたを取る。玉ねぎの皮をむく。ほかの野菜は皮をむかず、食べやすい大きさに切る。
(3)鍋に切った野菜と水を入れ、ふたをして火にかける。沸騰する直前に火を弱め30分、野菜が柔らかくなるまで煮る。約800〜900ミリリットルのスープが完成。これら野菜のほかに、季節ごとに旬の野菜を使ってもいい。
※(3)のスープがさめてからハンドブレンダーかミキサーで攪拌するだけでポタージュに! 苦手な野菜も食べやすくなる。
「『がんを予防する野菜スープ』に味付けは基本的にしません。塩分がなくても、野菜のうま味成分で十分においしく食べられます。しかし、物足りない場合や味に変化をつけたい場合は少量の調味料を使うこともできます。たとえば、しょうゆ、黒こしょう、味噌、カレー粉、岩塩などがおすすめです。野菜には塩分を排出するカリウムが含まれており、これらの調味料を少量加えても問題はありません。好みの味を作って、毎日続けましょう!」
「女性自身」2021年2月16日号 掲載