「大人になってもおねしょしちゃった……」と悩んでいるアナタ。そのまま誰にも言わずに放置しておくと、命に危険が及ぶ病いを見逃してしまうかもしれませんーー。
「おねしょは子どもだけでなく、大人にも存在する症状です。成人の約0.5〜2%が『夜尿症』に当てはまるといわれていますが、自分がおねしょしているということを隠したがる人もいますから、潜在的にはもっと多くの人が悩んでいると考えています」
小さいころは誰もが経験するおねしょ。6歳を過ぎても週1回以上おねしょを繰り返すと「夜尿症」と診断される。そんな症状で悩んでいる大人が50人に1人もいる、と冒頭のように語るのは、大人の夜尿症を多く診察してきた「おとなとこどもの仙川泌尿器科」の上杉達也院長だ。
「おねしょは成長とともに自然になくなっていきます。10歳以上で5%まで減っていきますが、なかには成人してもおねしょが続いてしまう人も(一次性夜尿症)。また、成人になってから夜尿症が起きること(二次性夜尿症)も珍しいことではありません。しかし、大人の夜尿症は“深刻な病気”が原因で引き起こされていることが多く、“単なるおねしょ”と看過してほしくないのです」
では、夜尿症にはどんな「大病のサイン」が隠されているのか、上杉先生に解説してもらおう。
■睡眠障害や睡眠時無呼吸症候群など
「排尿で安眠が妨げられないよう、通常は夜間に『抗利尿ホルモン』という物質が分泌され、それが就寝中の尿量増加を防いでくれます。しかし、寝つきが悪い、すぐ目覚めてしまう、眠りが浅いといった睡眠リズムの乱れや加齢によって抗利尿ホルモンの分泌量が減少し、睡眠中に膀胱にたまる尿量が通常より多くなってしまうのです。睡眠時無呼吸症候群や睡眠障害、そして睡眠の質を下げるうつ病などの気分障害は、睡眠リズムの乱れによって夜尿症を引き起こす病気の代表例です」
■糖尿病性神経障害、脳腫瘍など
夜尿症の原因として、排尿に関わる神経の病気も挙げることができるという。
「ふつうは膀胱におしっこがたまっても、脳からの命令伝達があるまで排尿することはありません。しかし、その神経ネットワークに障害があると、反射的に排尿をはじめてしまうのです。代表的なのが糖尿病の合併症として知られる神経障害。さらに、脳腫瘍や脳血管障害が隠れているケースも考えられます」
これらの疾患があると、尿意を感じにくくなり、日中でも尿漏れを起こすことがあるそう。
■糖尿病、心不全など
「血糖値が高いと、血糖を排出するために多くの水分を摂取するようになるため、糖尿病による多尿が原因でおねしょをしてしまう方も多くいます。また、夜に尿量が増えやすいのが高血圧、心不全。これらも夜間に多尿になることによって夜尿症を引き起こしやすい病気として知られています」
泌尿器科ではほとんどの場合、問診と尿検査、超音波検査などで診断や治療が可能。下着を脱ぐ必要もない。
「コロナ禍で病院に行くことに二の足を踏んでいる人も、“おねしょは何らかのサインだ”という意識を持ってほしいです」
「女性自身」2021年3月9日号 掲載