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男性と比べて平均寿命が約6年も長い女性にとって、夫の死後の人生をどう生きていくのか、というのは避けては通れない問題です。いずれ来る「その時」を乗り越えるためにきっちり備えておきましょうーー。

 

■住み慣れた家から離れるのは絶対にイヤ!!

 

夫の死後、今当たり前に住んでいる家に住めなくなるなんて想像もしていない人がほとんどでは? ところが、自宅が夫の名義となっていれば、一戸建て、マンションにかかわらず、夫の死後はその住居も相続の対象となる。つまり、必ずしも自分のものになるとは限らないのだ。相続に詳しい弁護士の竹内亮さんはこう話す。

 

「よくあるのが、夫とは再婚で、先妻との間に長男がおり、夫が遺言で長男に土地建物を相続させたケース。先妻の子どもとは折り合いが悪く、結果、長男一家が引っ越してきて、妻が追い出されてしまったという話も聞きます。遺言がない場合は、妻2分の1、長男2分の1で土地建物の持ち分を分割することになりますが、もめることが多いですね。子どもがいない夫婦の場合は、妻のほかに義理のきょうだいが相続人になるので、先のケースと同様に相続権の分割でもめ、出ていかざるをえなくなることがあります」

 

こうしたケースを防ぐには、やはり遺言が有効。夫には、妻が死後も安心して生活を送れるよう「土地建物を妻に相続させる」としっかり遺言に書いてもらおう。なお、どうしても自宅の土地と建物を子どもに相続させたい場合、妻には自宅に住む権利だけを与える「配偶者居住権」という制度があるが……。

 

「わざわざ自宅の居住権と所有権を分けることは、相続を複雑にするので、私はおすすめしません。夫の死後は妻に土地と建物を相続させ、その後はまた、妻が遺言を作って子どもに相続させればいいのです。ただ、土地と建物の価値が高い場合、妻へと、子どもへの相続で相続税が二重にかかると心配される方もいるでしょう。その場合は、配偶者居住権の使用について、一度、税理士に相談されるのがいいでしょう」(竹内さん)

 

■夫が死ぬ前に死亡保険金を受け取っておきたい!

 

生命保険の特約で、夫が余命6ヶ月以内と診断された場合、3,000万円を上限として、死亡保険金を生前に受け取れる「リビングニーズ特約」がある。「先取りで保険金を受け取れるなんて、もしやそのほうがお得!?」と反応してしまった人は、要注意。税理士でファイナンシャル・プランナーの福田真弓さんは、こう指摘する。

 

「リビングニーズ特約で受け取る保険金は、あくまで被保険者である“夫のお金”。夫の医療費に当てたり、夫の残りの人生を有意義に過ごすためのお金であることを忘れずに。使い切れなかったお金は相続財産として遺産分割、相続税の対象になるので要注意です」

 

たとえば、リビングニーズ特約を利用して、生前に1,500万円を受け取ったとする。思ったほど使わず、夫の死後に1,000万円が残った場合、遺産分割の対象となるので、義理のきょうだい、再婚の場合は義理の子どもと分けるケースもありえる。

 

いっぽう、通常の死亡保険金として妻が1,500万円を受け取った場合は、そのお金は受取人である“妻自身の財産”となるため遺産分割の対象にはならない。

 

「相続税が気になりますが、法律上『500万円×法定相続人の数』まで非課税と決まっています。子どもが2人いる場合『500万円×3人(妻+子ども2人)』で、1,500万円すべてが非課税になります。妻としては、死亡保険金として受け取るほうがベター。リビングニーズ特約を利用するなら、受け取ったお金は残さず使い切るようにしましょう」(福田さん)

 

なお、夫が死亡した後、当面の生活費や葬儀代が心配なら「預貯金の仮払い制度」を利用できる。夫の死後、銀行口座は凍結されるが、本制度を利用すれば、1金融機関につき最大で150万円まで引き出しが可能だ。

 

「女性自身」2021年3月2日号 掲載

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