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最近「リバースモーゲージ」の利用が増えている。リバースモーゲージとは、自宅を担保にお金を借りて、返済は契約者の死後、自宅を売却して行うというものだ。

 

老後資金不足を不安に思いながらも、自宅を離れたくない高齢者のニーズが高いのか、現在の推定融資残高、約1,600億円のうち、ここ3年で、約500億円増加している。こうした人気の背景には、2つの新商品があるようだ。経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。

 

■利用したい人はリスクも考えよう

 

1つ目は、住宅金融支援機構の保険のついた「リ・バース60」。契約者の死後に清算する際、借りた総額より自宅の売却益が少なかった場合、これまでは相続人が差額を支払わねばなりませんでした。

 

そのため「子どもに迷惑がかかる」と利用をためらう方が多かったのですが、リ・バース60は借入金が超過しても相続人に請求がいかない「ノンリコース型」が中心。

 

多く借りても請求されないので“借り得”とも思えますが、金融機関が損するはずがありません。ノンリコース型は、利率が通常より高くなっています。リバースモーゲージの契約者は原則、利息だけ毎月返済しますが、利率が高い分、毎月の返済額、ひいては返済総額が膨らむ可能性があります。

 

2つ目は、毎月の利息返済がない商品です。生前は一切返済せず、死後にすべてを清算します。お金を借りる人には好都合ですが、金融機関にはリスクの高い契約です。担保物件の評価額が高いなど、融資の条件は厳しいものになるでしょう。

 

そもそもリバースモーゲージは、利用できる方が限られています。60歳で契約して90歳で亡くなった場合、金融機関は資金回収に30年かかります。となると融資対象は、長期間資産価値の落ちない一等地の物件などに絞られるでしょう。マンションや地方の方は利用できないことが多いのです。

 

ほかにも、大きく3つのデメリットが考えられます。

 

【1】長生きリスク

契約者の長生きに備えて、契約期間を定めるケースがあります。契約期間を過ぎたら、返済を迫られ自宅を追い出されてしまうかも。

 

【2】評価額リスク

担保物件の評価額が下がったら、借入金が予定より減らされたり、融資が中断される危険性も。

 

【3】融資額リスク

通常家を担保にお金を借りると、評価額の7割程度の融資が受けられますが、リバースモーゲージは2〜5割程度です。融資額が十分でないケースもあるでしょう。

 

リバースモーゲージにはさまざまなプランがあり、仕組みはとても複雑です。危険性をしっかりと認識しないまま、契約する方がいるのではと心配です。

 

いっぽう、自宅を売却し、売却益でコンパクトな家に住み替え、残りは老後資金として使うという手もあります。冷静に、さまざまな選択肢を検討してください。

経済ジャーナリスト

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