10月20日から、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」の本格運用が始まった。そんな、マイナ保険証について経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。
■国のデータ管理に不安が残るが……
マイナ保険証の本格運用は当初3月末の予定でしたが、患者情報が読み取れないなどのトラブルがあったため、先送りされていました。
ただ、実際に読取り装置などの準備が整ったのは、全国の医療機関・薬局など約23万施設のうち、8%足らずの約1万8,000施設です。半導体不足で読取り装置の生産が遅れたこと、新型コロナ対応で余裕のない医療機関が多かったことなどが原因のようです(’21年10月10日・厚生労働省)。
マイナ保険証を利用するには、マイナンバーカードを取得したうえで、保険証利用を申し込みます。申し込みはスマホやパソコン、セブン-イレブンのマルチコピー機から行えますが、マイナンバーカードの暗証番号が必要です。ご注意を。
マイナ保険証は「マイナ受付」のポスターやシールのある医療機関で使えます。受付けは読取り装置に自分でセットし、顔認証などで本人確認をします。大きな病院などでは受付けが早く済み、待ち時間の短縮につながるでしょう。
そのほかのメリットは、転職などで健康保険証が変わっても、マイナ保険証はそのまま使え、処方薬の情報や特定健診の結果がネット上で確認できます。そして11月からは医療費の詳細も閲覧でき、’21年分からの確定申告で医療費控除に利用できるようになります。
とはいえ、使える医療機関が1割未満では便利とはいえません。自分が通う医療機関の1つでも使えないところがあると、従来の健康保険証を手放せないからです。
そもそもマイナンバーカードは、パスポートと同様、大事に保管して持ち歩きたくない人もいるでしょう。さらに、消えた年金問題や、先日は97万件に及ぶ年金振込通知書のミスがあったばかり。国のデータ管理に信頼をおけない人もいて、マイナンバーカードの普及率は38.1%と伸び悩んでいます(’21年10月1日・総務省)。
驚いたのは公明党の選挙公約です。マイナンバーカードと連携しキャッシュレス決済を行った人に、新たに3万円分のマイナポイントを付与することを掲げました。
’20年9月から買い物額に応じた最大5,000ポイントの還元キャンペーンがありましたが、その際もらった人はまたもらえるのか? ポイントの付与には買い物をしなければならず、生活が苦しい人に届きづらいのでは? 疑問が残ります。
マイナ保険証は大病院から広がっています。いっぽうで国はかかりつけ医を推奨しています。マイナ保険証は大病院から導入され、私たちには「大病院には行かず近所の病院に行け」という、どうしてもちぐはぐ感がぬぐえません。
国には、1兆円超の血税を無駄にした「住基ネット」の二の舞にならないよう、また、新型コロナ対策に支障をきたさないように、慎重に進めてほしいと思います。