頭痛や生理痛に苦しむ女性の味方となる鎮痛剤。だが、使い方を誤ると、十分な効果が得られない場合も。ワクチンの副反応対策で身近になった薬の正しい使い方を知ろうーー。
コロナ禍による精神的ストレスや、テレビ・スマホによる肩こりや首こり、マスク習慣などが要因となり頭痛に苦しむ人が増えているという。さらにワクチンの副反応への対応で、ふだん使っていなくても鎮痛剤を使ったという人も多いだろう。
「ワクチンによる副反応が出た場合に、手軽に購入できる鎮痛剤で頭痛や発熱などの症状をやわらげることは問題ありません。しかし、副反応が出る前から予防的に鎮痛剤を飲むのは避けるべきです。『薬物乱用頭痛(正式名称・薬剤の使用過多による頭痛)』の第一歩になりかねません」
そう語るのは、慶應義塾大学医学部の元教授で、湘南慶育病院の鈴木則宏院長だ。頭痛研究の第一人者である鈴木先生が薬物乱用頭痛について解説する。
「市販されている鎮痛剤は大きくわけて、エヌセイズ(NSAIDs)と呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬と、アセトアミノフェンの2種類ありますが、薬物乱用頭痛はこれら鎮痛剤を常用して起こる慢性頭痛です。鎮痛剤は頭痛以外にも腰痛や歯痛などさまざまな痛みに対して常用されますが、薬物乱用頭痛は片頭痛や緊張型頭痛を抑えようと鎮痛剤をひんぱんに服用している人に生じます。薬物乱用頭痛のメカニズムはよくわかっていませんが、頭痛を抑えようと薬を飲んでいるのに、その薬によって頭痛が慢性化。さらに薬に頼ってしまうという悪循環を招いてしまうのです」
一般的にアセトアミノフェンの鎮痛剤よりも、即効性と効き目が高いといわれるエヌセイズの鎮痛剤。ワクチンの副反応への対応で使われることが多いのも、このタイプの鎮痛剤だ。
エヌセイズの鎮痛剤「ロキソニンS」を販売している第一三共ヘルスケア・マーケティング部のブランドマネージャー土合桃子さんは仕組みを次のように語る。
「エヌセイズは、痛みの原因物質である『プロスタグランジン』の産生を抑制する働きがあります。『即効性がある』『頭痛・発熱に効く』という特徴がある一方、胃酸から胃を守る粘液分泌なども抑制するため、腹痛や胃部不快感などの副作用が出ることもあります。ロキソニンSは胃への負担が少ない特徴も持ち合わせていますが、もし症状が出たら注意が必要です」
鎮痛剤の購入者の8割以上が女性で、購入目的の72%が頭痛への対応だという。薬物乱用頭痛については、どのような警鐘を鳴らしているのだろうか?
「市販の鎮痛剤は、定められた用法・用量を守って使用することを前提でつくられています。まず、それを守っていただくこと。そして、正しく服用しているのに痛みが治まらなかったり、1カ月の服用日数が10日以上になったりする場合は、病院を受診していただくように発信しています。また予防的に服用はしないことも呼びかけています」
どう使うと、効果的なのか。
「鎮痛剤は痛みそのものをなくすのではなく、あくまでも痛みの原因物質がそれ以上産生されないようにするもの。原因物質が体の中で増え過ぎると、鎮痛剤を服用しても効果が実感しにくくなることもあるので、痛みを感じたらすぐに使用するようにしてください」
正しく使えば、苦しい痛みを軽減してくれる鎮痛剤。次のポイント5を守って、症状が出たら迷わず使おう。