東京を離れる人が増えている。東京23区では’21年、転出者が転入者を上回った(総務省)。データのある’14年以降で初めてのことだ。コロナ禍でのリモートワークの浸透などにより、東京に住む意味が薄れ、都心から移り住む人が増えたのだろう。
地方では移住者の誘致が盛んだが、なかでも親世帯との同居や近居を支援する自治体がある。経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた――。
■家賃が20%引きになる場合も
近居とは日常的な行き来ができる“スープの冷めない距離”に住むこと。同居よりハードルが低いので、同居と並んで近居にも補助金を出す自治体が多いのです。
たとえば、神奈川県厚木市の「親元近居・同居住宅取得等支援事業補助金」は、親世帯が1年以上厚木市在住で、子世帯が市外から転入の場合に補助金が出ます。金額は同居用の住宅購入だと60万円、近居なら40万円。リフォームは費用の1割で20万円が上限です。
ほかにも子世帯に中学生以下の子どもがいる、世帯主が40歳未満など4つの条件があり、それぞれ満たすと10万円ずつ加算され、補助金は最大100万円です。
千葉県松戸市の「三世代同居等住宅取得支援」は親世帯が松戸市在住で、子世帯に中学生以下の子どもがいることなどが条件です。同居用の住宅購入には75万円、近居用なら50万円を補助。子世帯が市外からの転入だと25万円加算され、こちらも最大100万円です。
山梨県鳴沢村「三世代同居等支援事業補助金」は、親世帯か子世帯どちらかの転入だけでなく、親世帯と子世帯がそろって転入でも補助金が出ます。条件は子世帯に中学生以下の子どもがいること。
補助金は住宅購入なら、同居でも近居でも費用の2分の1で、上限は新築なら100万円、中古なら80万円です。同居ならリフォームでも補助金が出て、費用の2分の1で上限50万円です。
どの地域も若い人に転入してもらい、バランスの取れた人口構成に近づけたいのが第一の目的です。
加えて、高齢者の5人に1人はひとり暮らしといわれる今(’20年・国勢調査)、同居・近居がかなえば、親が若いうちは子育てのサポートをし、高齢になれば子世帯が介護などを担うでしょう。
高齢者の生きがいにつながり、健康な高齢者が増えれば、自治体としては医療費や介護費などが削減できます。住民と自治体、両方にとってメリットのあるwin-winの施策といえるでしょう。もっと広がってほしいものです。
また、こうした補助金施策のない地域でも、都市再生機構(UR)の「近居割」が利用できます。近居割とは、近居・同居のために親世帯と子世帯の両方、あるいはどちらかがURの賃貸住宅に住む場合、家賃が5年間5%引きになるもの。子世帯が一定の収入以下だと5年間20%引きになる場合も。
親が元気なうちに、どこに住んでどう見守るか、近居・同居も含めて相談してはいかがでしょう。
【PROFILE】
荻原博子さん
身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある