7月8日、安倍晋三元首相(享年67)が銃撃されて死亡した。殺人容疑で送検された山上徹也容疑者(41)は、母親が入信した旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への積年の恨みが犯行の動機だと供述している。
政治家と統一教会のつながりについて、宗教や霊感商法に詳しい紀藤正樹弁護士が解説する。
「統一教会は全国各地で霊感商法による違法な資金集めや詐欺的伝道などさまざまな違法行為を起こしてきました。霊感商法とは先祖などの因縁や祟りがあると脅して、高額なお布施をとったり、高額な商品を売りつける手口で、1980年代からたびたび問題に。しかし、なぜか警察のメスはなかなか入りませんでした」
背景には、統一教会が持つ強い政治力があると指摘されている。
「韓国で生まれた統一教会は1959年に日本に進出し、1964年に宗教法人と認証されます。1968年、反共産主義を掲げる統一教会は政治活動団体『国際勝共連合』を創設しますが、安倍元首相の祖父の岸信介元首相がこれに共感し交流を深め、統一教会の本部に何度も訪問した。その密接な関係は福田赳夫元首相を経て、安倍元首相まで脈々と続いていたのです」(紀藤弁護士)
長年、宗教トラブルに取り組んできた山口広弁護士はこう語る。
「安倍元首相には、統一教会にエールを送るような行為はやめていただきたいと繰り返しお願いしてきました。有力な政治家との結びつきは、信者の違法な活動に対して“お墨付き”を与え、信者の士気も上げます。その結果、新たな被害者が生み出されていくのです」
7月26日の記者会見で、安倍元首相の実弟で防衛大臣の岸信夫氏(63)は自身と統一教会の関係について、「統一教会の方と付き合いもあるし、選挙の際にも手伝ってもらっている」と語った。さらに、「あくまでもボランティアなので次の選挙でどうなるかはお答えできない」と、今後も協力関係を続けていくことも否定しなかった。
■「政治力との絆が弱かったから摘発された」
もちろん、霊感商法を行ってきたのは統一教会だけではない。
「2009年に、統一教会の手口をまねた霊感商法の『神世界』グループが提訴されました。のちに逮捕された責任者は『政治家との絆が弱かったから警察に摘発された』と語っています。この事件をきっかけに、統一教会に捜査が再び及ぶことが期待されましたが、教会側がコンプライアンスを順守すると宣言したことを警察がうのみにして、捜査しないという不可解な決着に。しかし、反社会性はいっこうに改まらず、現在も『霊感商法』の被害者の多くは、統一教会によるものなのです」(紀藤弁護士)
「全国霊感商法対策弁護士連絡会」によると、昨年までの35年間で統一教会などが行った霊感商法の被害額は1237億円に。この5年だけでも55億円にのぼる。