食事への心配りが数十年後の健康を大きく左右する(写真:アフロ) 画像を見る

「現在、日本の100歳以上の人口は9万人超を数えます。そのうち“人生100年”は当たり前の時代となり、やがて“人生120年”を見据えて生きる時代になるでしょう」

 

こう話すのは、お茶の水健康長寿クリニック院長の白澤卓二先生。白澤先生は認知症予防の研究者で、さまざまな観点からアンチエイジングにアプローチしている。大切なのは、単に平均寿命が長くなることではなく、自分らしくイキイキと過ごせる“健康寿命”を延ばすことだ。

 

「120歳まで生きることを考える際に重要なのが、脳と骨のコンディションです。2つが私たちの体の両輪としてそろって機能してこそ健康長寿が実現します。その準備は早ければ早いほど望ましいです」(白澤先生・以下同)

 

脳と骨の健康維持には、睡眠や運動といった生活習慣はもちろんのこと、日々私たちの体を作る食事に関して気を配ることが欠かせない。

 

「脳は炎症によるダメージを受けやすい器官です。さまざまなストレスによって私たちの体をサビさせたり(酸化)、コゲさせたり(糖化)すると炎症につながります。いっぽう、抗酸化作用、抗糖化作用を発揮する食材もあります。どんな成分がどのように体に作用するのかを把握しておき、それを日々の食事に取り入れることで、10年、20年、さらには50年後の自分の体を変えていくことができるのです」

 

日々の食習慣が健康長寿の土台になる。白澤先生自身がふだんから意識的に取っているという栄養素のなかで、まず意識したいのが、ビタミンD。ビタミンDの血中濃度が下がると、認知症の発症リスクが上がることがわかっている。

 

「日本人は世界的に見てもビタミンDの摂取量が圧倒的に不足しています。脳内で神経細胞が情報交換をするシナプスが活動するためにはビタミンDが欠かせません。また、ビタミンDは骨を作る材料にもなる。閉経後、女性ホルモンが減って骨粗しょう症になりやすい女性にとっては積極的に取ってもらいたい栄養素です」

 

ビタミンD不足は認知症のほか、インフルエンザ、高血圧、心筋梗塞、さらにはがんなどのリスクが高まることもわかっている。ビタミンDを多く含む食材には、サケ、イワシやアジなどの青魚、しいたけなどのきのこ類がある。また、日光を浴びるとビタミンDを体内で生成することもできる。

 

「ただし、体内に十分なコレステロールがないと、ビタミンDは生成されません。ナッツやアボカドなどには良質なコレステロールが含まれています」

 

脳の炎症を抑え、血管を丈夫にするには、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、葉酸の3つも重要。魚介類や野菜にもさまざまなビタミンB群が含まれるが、この3つに加えて豊富なビタミンB群を含むのが豚肉だ。

 

「3つのうちの一つでも不足すると『ホモシステイン値』が高くなるといわれています。

 

ホモシステインは、悪玉アミノ酸とも呼ばれるもので、動脈硬化を引き起こし、脳と血管にダメージを与えます。豚肉はビタミンB₁、B₂、ナイアシン、パントテン酸、ビオチンなども含みます。ビタミンB群は体内で互いに助け合い総力戦で働く、とても優れた食材なのです」

 

強い抗酸化力を持つ「フィトケミカル」も十分に取りたい成分。抗酸化力が高いので、体をサビやコゲから守ることにつながる。フィトケミカルは、トマトやピーマン、なす、ブロッコリーなど、野菜や果物の鮮やかな色素部分に含まれる。ポリフェノールやカロテノイドはその一種だ。

 

多くの健康効果が知られている納豆は、抗炎症作用のほか、骨粗しょう症の予防にも一役買ってくれる。納豆に含まれるビタミンK₂がカルシウム生成に働くのだ。

 

「最近の研究では、このビタミンK₂にパーキンソン病の予防効果もあることがわかってきました。パーキンソン病は脳の神経細胞に異常が発生し、神経細胞が死滅してしまう疾患ですが、ビタミンK₂にはそれを防ぐ働きがあることがわかったのです」

 

1日1パックを目安に毎日食べるようにしたい。

 

「自分の寿命は何歳からでも変えることができる」と白澤先生は強調する。今年は健康長寿に必須の成分を意識的にチャージしよう。

【関連画像】

関連カテゴリー: