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金融庁は「仕組み債」など金融商品の販売実態について、地銀99行とグループの証券会社27社に一斉調査を行うようです。

 

仕組み債とは、複雑な仕組みの金融派生商品が組み込まれた債券です。債券というとすぐに国債が思い浮かびますが、国債は半年ごとに利息が払われ、満期まで保有すると元本が戻る安心なもの。ただし、金利は0.05%です。

 

いっぽう仕組み債はもっと高金利で「高利回りな債券」をにおわせていますが、実は、ハイリスクハイリターンな金融商品です。

 

具体的な構造は以下のとおりです。まず、「売買の基準=A社の株価」などと決め、その株価が上がったとき、下がったときの水準もあらかじめ決まっています。A社の株価が値上がりして上の水準を超えると、仕組み債は払い戻しに。株価上昇中ですから、長く保有すればもっともうかるかもしれませんが、そうはさせてくれません。元本に加え多少の利益は出ますが、もうけは小さいでしょう。

 

反対にA社の株価が値下がりして下の水準より低くなると、下落率などに応じて戻る元本が減らされ、大きな損失につながります。A社の株価が上下の水準内の穏やかな値動きの場合のみ、契約どおりの高利回りになりますが、確実性はありません。

 

■銀行だからと信用してはダメ

 

実際の仕組み債は種類も多く、もっと複雑です。また、途中解約すると大損をする商品がほとんどですが、専門用語などを使って説明されても投資の初心者にはチンプンカンプン。よく理解しないまま、「債券だから安心だろう」「銀行さんのおすすめだから」と購入する方が後を絶たないのです。

 

全国地方銀行協会によると、’21年度は加盟する62行のうち57行が、仕組み債を約9500億円分販売。また、27行で約110件の苦情が寄せられ、いまでも苦情は減っていないといいます。

 

銀行はほかにも「仕組み預金」という金融商品も扱っています。仕組み債と同様、複雑な金融派生商品が組み込まれたハイリスク商品ですが、「高利回りの定期預金のようなもの」と間違った理解のまま、購入する方もいるようです。

 

いずれにしても、超低金利時代のいま、高利回りには理由があるはず。理由がわからないものには手を出さないことが肝心です。また、世の中に“おいしい話”はないと心しましょう。銀行は「老後資金を増やすために」と勧めますが、本当は自行が生き残るため、仕組み債など他社が作った金融商品を代理店のような形で販売して手数料を稼いでいます。どんなにハイリスクでも、リスクを負うのは顧客。銀行にはノーリスクの“おいしい商品”なのです。

 

仕組み債などの金融商品は、退職金などまとまった資金を持つ高齢者が狙われます。断るのが苦手な方は要注意。そして、金融商品の購入は自分一人で判断せずに、家族と相談してからが鉄則です。

経済ジャーナリスト

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