「私はがん保険に入る必要はないと思っていたし、自分ががんになってみて、改めて確信しました」
こう語るのは、経済評論家の山崎元さんだ。
日本人の2人に1人が、がんになるといわれている。近年も、’22年12月にあき竹城さん(享年75)と高見知佳さん(享年60)が亡くなった。50代以上の女性にとって、がんは身近な問題だ。
特に気になるのは、お金の問題。専門家はどう考えているのだろう。そこで、がんから生還したお金のプロに体験談を聞いた。
山崎さんが体の変調を感じたのは、昨年7月ごろ。
「のどに痛みがあったりせきが出ることから、内視鏡検査をして、8月下旬にステージ3の食道がんと告知されました。手術前に抗がん剤治療をし、10日から2週間ほどの入院を、2回行いました」
抗がん剤治療では髪の毛が抜けてしまったが“散髪代が浮いた”と、潔く坊主にしたという。手術をしたのは10月末。
「大掛かりで、多くのスタッフが関わりました。しかし、胸を開けるわけではなく、胸腔鏡や『ダ・ヴィンチ』という最先端のロボット手術機器を使ったため、傷口は最小限。手術翌日は9本くらい管がついていたんですが、13日目には退院したんです」
一連の検査、抗がん剤治療、手術、入院など、合計200万円ほどかかったというが、支払った医療費は、それほど高くなかった。
標準治療に関しては原則3割負担。さらに、月の医療費が上限額(一般的な収入の場合、8万~9万円)を超えたら、その分が返金される高額療養費制度もある。
「最先端の治療を受けていましたが、実際は40万円くらいで済みました。高額療養費制度も使いましたし、勤め先の会社が入っている健保は、高額療養費制度よりも充実していたので、その差額分も返金されました。ですが、個室の差額ベッド代は自己負担。1泊約4万円でした」
抗がん剤治療と手術で、合計約40泊ほど入院したため、差額ベッド代だけで160万円かかったという。
今後は、毎月1回、再発防止のための薬物療法を今年いっぱい続ける予定だが、これまでと同じように高額療養費制度などを利用する。
また、高額医療が1年のうちに3回以上ある場合、4回目以降はさらに負担が軽くなる多数該当高額療養費という制度もあるのだ。
「差額ベッド代が高額になりましたが、大部屋で我慢できればかかりません。いつでも自由に使える100万円ほどの貯金があれば、がん保険の必要はないと考えます」
【山崎さんの治療費】
・検査+抗がん剤治療+手術+入院→約200万円(うち、高額療養費制度や健保を利用し、実際に支払ったのは40万円)
・個室の差額ベッド代(1泊約4万円×約40泊)→約160万円
計:約200万円