3月5日、新潟県胎内市の養鶏場で鳥インフルエンザが確認され、9日時点で約42万7000羽の鶏を殺処分した。国内では昨年10月28日から累計1500万羽を超える鶏が殺処分されており、カンボジアでは、H5N1型の高病原性鳥インフルエンザに感染した11歳女児が死亡。WHOは「ヒトを含む哺乳類の感染例が増加していることは懸念される状況」と警戒感を強めている。
医療ガバナンス研究所の理事長で内科医の上昌広さんが言う。
「今のところ、人への感染は限定的で、人から人へ感染する報告例はありません。ただし、温暖化によって生き物の生息域は狭まっており、人と獣の接点が増えています。感染症対策のためには、人と動物の健康維持に一丸となって取り組まなくてはなりませんが、日本を含めた国や地域によって、それが徹底されていません。鳥インフルエンザの感染例が増えれば、確率的にいって、いつかは必ず人へ感染する変異を遂げるウイルスが出てくると考えています。それは明日かもしれません」
■インフルは2歳以下も危険 鳥の死骸やフンに注意
そうした変異を遂げる経緯の一例が、ブタを介したものだという。
「ブタは鳥や人のインフルエンザの両方に感染します。懸念されるのは、ブタが同時感染してしまった場合、体内で双方の遺伝子の組み換えが起きて、人に感染しやすい鳥インフルエンザウイルスができてしまうことです」
では、実際に鳥インフルエンザが人へ感染し、人から人へ感染できるように変異してしまった場合、どのような症状が考えられるのか。「可能性は低いですが」と前置きし、東北大学災害科学国際研究所の医師・児玉栄一さんが語る。
「H5型に関しては、免疫がありません。現在のワクチンでどこまで予防効果があるかわかりませんが、重症化予防はできるのではないかと、期待しています。症状に関しては、気管支炎や上気道炎で人が死亡することはまれですが、鳥インフルエンザは肺胞で複製しやすく、肺炎のリスクが高いです。新型コロナのような高齢者の重症化リスクばかりでなく、インフルエンザは2歳以下の子どもの死亡率が上がります」
厚労省では、鳥インフルエンザのような新型インフルエンザが発生した場合の被害想定をしている。資料によると、約8週間でピークに入り、最大で日本の全人口の25%(3200万人)が罹患し、医療機関の受診者は1300万~2500万人、入院患者は53万人から200万人、そして中等度の毒性であっても死者17万人、重度の毒性であれば64万人と、新型コロナの死者7万人を超える試算なのだ。(表参照)
「もし鳥の死骸があれば、さまざまな感染症のリスクもあるので、触らずに保健所に連絡する。また鳥のフンにもインフルエンザのウイルスがいる可能性があるので、手袋をして掃除したり、終わった後に消毒をするようにしましょう」(児玉さん)
まずは、冷静に動向を見守り、手元などを清潔に保とう。