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総合スーパー「イオン」などを展開する「イオンリテール」は、パート社員の待遇を改善し、仕事内容が同じ正社員の待遇と同等にする制度を始めました。

 

対象は月120時間以上働き、「リーダー」などの売場責任者を務めるパート社員です。年1回の昇格試験に合格することが条件で、昨年秋の試験では42人が合格。自宅から通える店舗で働く地域限定正社員との格差をなくします。

 

具体的には、これまで正社員にだけ支給していた退職金や賞与、子育て支援の手当などを支給するほか、関東圏の時給で16%(約180円)上がり、年収は2割程度増える見込みだといいます。

 

イオングループは2月にパート社員の時給を7%アップしたばかり。さらなる待遇改善の裏には、人手不足の影響があると思います。現在、イオンリテールの売場責任者1万1000人のうち、パート社員が9%を占めています。

 

パート社員なしでは店舗運営ができず、優秀な人材はできるだけ囲い込んでおきたい、’30年には必要な労働者の1割近くが不足するとの試算もあり、対策を急いだのかも(’18年・パーソル総合研究所)。

 

ですが、思い出してください。’18年に成立した「働き方改革関連法」には、「同一労働同一賃金」の規定があり’20年4月に施行されています。本来、同じ仕事内容なら、正社員もパート社員も同じ待遇を受けて当然なのです。

 

■働き方が広がり、優秀な人材確保にも

 

しかし、この法律は抜け穴が多いです。たとえば同一労働同一賃金の対象に、期限を決めず長く働く非正規社員、「無期雇用労働者」が含まれていません。3年契約などと期限がある有期雇用より、無期雇用のほうが安定して働けるのは明らか。同じ職場で5年以上働けば有期雇用から無期雇用に転換できるルールもあり、目指す方も多いでしょう。

 

それなのに無期雇用になったとたん、同一労働同一賃金の対象外。これではいっこうに待遇改善が進まないでしょう。イオンリテールは法律を上回る無期・有期に関わらない待遇改善で、一石を投じたことになります。

 

いっぽう、待遇改善の対象者は、ほとんどフルタイムで働き売場責任者まで務める方ですから、すでに年収の壁を越えているでしょう。働く意欲のある方たちに、努力に見合う待遇を用意することで、働きがいを感じられると思います。

 

また物価高の昨今、夫の収入だけに頼れない方が多いので、年収の壁を越え稼ぐ姿を見て、後に続こうと思う方が増える可能性も。同一労働同一賃金の拡充は、優秀な人材確保の大きな手段になります。ほかの企業にもパートの待遇改善を進めてほしいものです。

 

岸田首相は「年収の壁の是正」などと発言していますが、パフォーマンスのように映り、本気さが感じられません。それよりも、抜け穴だらけの同一労働同一賃金の制度を、さまざまな働く人を守る制度へ進化させてほしいと願います。

経済ジャーナリスト

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