「ゆうちょ銀行が民営化される前、2007年9月30日以前に預けていた定額郵便貯金、定期郵便貯金、積立郵便貯金は、満期になってから20年2カ月以内に引き出さなかった場合、所有する権利が消滅し、貯金は国庫に入ってしまいます。
こうした“消えた郵便貯金”は2021年度で457億円。権利消滅の2カ月前に催告書が送付されるのですが、8割が貯金した本人に届いていませんでした。貯金が消えたことすら気づいていない人も多いかもしれません」(大手新聞記者)
民営化前の郵政公社時代に預けた貯金の権利消滅は「旧郵便貯金法」を根拠とし、その時代の貯金だけ扱いが異なる(表参照)。一般的な銀行で、預金を長期間放置するとどうなるのだろうか?
元銀行員でファイナンシャルプランナーの飯田道子さんが語る。
「銀行口座を開設したものの、就職や結婚、引っ越しなどをきっかけに使わなくなり、放置している口座を持っている人は多いはず。とくに20年ぐらい前まで、口座の新規開設でブランケットやぬいぐるみなどの景品がもらえたこともあり、利用しない口座を作った人も少なくありません。使わない口座にお金を残したままだと『休眠預金』となってしまいます」
休眠預金とは、10年以上入出金などの取引がない口座の預金のこと。休眠預金は年1千200億円程度も発生しているという。
「2018年から休眠預金等活用法に基づき、休眠預金は銀行から預金保険機構に移され、子どもや若者、生活困窮者への支援など公益活動に充てられることになりました。残高が1万円以上の口座については、休眠預金になる前に銀行から通知状が届くようになっていますが、残高が1万円未満の口座には通知がありません。また転居しても住所変更の届け出をしないと、通知が届きません。こうした理由で、休眠預金になるケースは多いのです」(飯田さん、以下同)
休眠預金になったら、銀行に預けたお金は消えてしまうの?
「たとえ休眠預金になっても、銀行の窓口で預金者が請求をすれば、何年たっていたとしても利子を含めた預金を引き出すことができます。亡くなった人の名義の休眠預金でも、相続人であれば、銀行で所定の手続きをすれば引き出すことはできます」