「胸が締めつけられるように痛むのに、病院を何軒回っても〈異常なし〉と言われる……。もし、あなたがそんな症状に悩まされているなら、“微小血管狭心症”かもしれません」
そう警鐘を鳴らすのは、日本冠微小循環障害研究会(J-CMD)の代表世話人で、国際医療福祉大学副大学院長や東北大学名誉教授を歴任する医師の下川宏明さん。別名“隠れ狭心症”とも呼ばれる微小血管狭心症は、見逃されやすい病気なのだ。
いわゆる“狭心症”とは、どう異なるのか。
「一般的な狭心症は、心筋に血液を送る太い冠動脈が、動脈硬化やけいれんによる収縮によって、一次的に酸素不足(虚血状態)になることで胸痛などを引き起こします。
一方、微小血管狭心症は、太い冠動脈の先にある細い微小冠動脈が炎症を起こし、十分に拡張しなかったり逆に収縮しすぎたりすることで、同じく一次的に酸素不足になるために胸痛などが生じるのです」(下川さん、以下同)
つまり、同じ狭心症でも、虚血状態になる血管の場所と原因が異なるのだ。加えて男女差もあるという。
「一般的な狭心症は男性に多いのですが、微小血管狭心症は女性ホルモンが減少することで罹患しやすくなるため、2対1の割合で女性のほうが多いのが特徴です。更年期世代の女性の10人に1人が微小血管狭心症に罹患していると考えられています」