郵便料金が10月から上がります。今63円のはがきは85円に、封書は25gまで84円、50gまで94円ですが、10月以降は一律110円と3割ほどの値上げ。速達料金やレターパックなども上がります。消費税引き上げ時を除くと、30年ぶりの値上げです。
郵便事業は民営化後初めて、2022年度に211億円の赤字が出ました。このままでは赤字は膨らむいっぽうで、総務省によると2028年度の赤字は3千439億円になると試算されています。
日本郵便は収支改善のため、2021年10月から土曜日の配達や普通郵便の翌日配送を停止、2023年10月にはゆうパックの値上げなどを行いました。それでも赤字が減らないので、全国どこにでも安価な一律料金で郵便物を届ける「ユニバーサルサービス」の値上げに踏み切ったというわけです。
背景には、物流業界の深刻な人手不足があります。日本郵便は、営業費用の66%が人件費といわれていますから、人手不足による人件費高騰は大問題でしょう。
また、宅配大手のヤマト運輸や佐川急便も、物流の危機への対応を急いでいます。両社とも2023年4月と2024年4月の2度、宅配便の送料値上げを行いました。さらに「年度ごとに料金を見直す」として、来年度も値上げがあるかも。
■置き配の盗難防止には「宅配バッグ」がおすすめ
加えて「置き配」の本格導入も決めました。置き配とは、荷物を対面で引き渡すのではなく玄関先などに置いておく配送方法です。ネット通販のアマゾンでは2020年3月から置き配が標準配送ですが、両社は盗難の恐れがあると導入には慎重でした。
しかし、再配達という大きな負担の削減を優先したのでしょう。ヤマト運輸は2024年6月から、佐川急便は2024年9月から置き配を選べるようになります。物流の危機を脱するためには、値上げだけでなく配送方法の見直しなど多方面からの施策が必要なのです。
日本郵便は10月の値上げで、2025年度はいったん黒字に転換しますが、2026年以降は赤字に戻ると予測しています。今後、ゆうパックなどの再値上げや、置き配の導入もあるかもしれません。
「置き配だと不安」な方はこれまでどおり対面配達を選ぶこともできますが、再配達を減らすには私たち利用者の協力が不可欠です。宅配業者に会員登録しておくと、荷物がいつ届くか事前に通知が来ますから、在宅を心がけましょう。不在が明らかなら、到着時間を変更することもできます。
また、留守が多い方は、置き配を活用しましょう。盗難防止には「宅配バッグ」の利用がおすすめです。玄関先などに置く宅配バッグのベルトを屋内に固定し、宅配業者が荷物を入れたら南京錠などでロックしてもらうもの。2千~6千円で購入できます。
生活に関わるあらゆるものが、物流企業によって私たちの元に届きます。便利な暮らしを守るために、私たちも協力しましょう。