「株式会社セキグチ」社長の吉野壽高氏とモンチッチちゃん(写真:本誌写真部) 画像を見る

“そばかすとおしゃぶりポーズ”がかわいらしいぬいぐるみのモンチッチは、1974年の発売以来、世界中でブームを巻き起こし、「子どものころに、よくごっこ遊びをした」と、当時を懐かしむ読者世代も多いだろう。

 

これまで30以上の国と地域で販売され、累計売り上げは7千万体以上。その昭和の人気キャラクターが令和の今、またも大ブームとなっている。

 

近年、手持ちのバッグやリュックをぬいぐるみなどのキーホルダーで“デコる”のが大流行。人気セレブやインスタグラマーがつけているものをまねしようと、店頭から商品がなくなるといった社会現象を巻き起こしているのだ。

 

■思わぬところから火がついたと社長もびっくり

 

「50周年のプロモーションを行っていたところ、急にタイで売れ始めました。

 

タイの国民的俳優のチョンプー・アラヤーさんが、2024年夏にインスタグラムに投稿したのがきっかけで、タイで人気に火がつきました。フォロワー数1千170万人ですから、すごい影響力です。

 

当時はまだ、正式にタイに輸出していない時期にもかかわらず、日本に来た観光客がショップで根こそぎ買っていくという現象が起こったのです」

 

思わぬところから火がついてびっくりと語るのは、モンチッチの製造販売を手がける「セキグチ」(東京都葛飾区)の吉野壽高社長。

 

アラヤーさんが“モンチッチ愛”を発信した後、10月にタイで販売開始すると、わずか4カ月で約30万体を売り上げる大ヒットに!

 

「さらに、フォロワー1億人を誇るK-POPガールズグループ『BLACKPINK』のLISAさんが、原宿でモンチッチを爆買いする様子をインスタグラムのストーリーで公開してくれました。すると、韓国でも火がついたのです。

 

■ラブブ派VSモンチッチ派に分かれ、さらにブームが過熱

 

中国発キャラクターのラブブの影響もあると思います。ラブブの話題が出ると『私はモンチッチのほうが好き』とか、ラブブの文脈でモンチッチを語ってもらうことが増えたことも大きく、それがアメリカのマーケットに波及していきました。アメリカではこれまで玩具の売場のみで売られていたのが、ギフトや雑貨売場でも取り扱われるようになって、たくさんの人に手に取ってもらえるようになったのです」(吉野社長、以下同)

 

■2年で約5倍の売り上げに!

 

また、押入れに眠っていた初代モンチッチが「メルカリ」に出品されて、一時なんと5万8千円の値段がついていたとか。国内外問わず再ブームの影響は大きく、モンチッチの売り上げは国内外合わせて、’24年2月期に7億円だったのが、’25年2月期には20億円に急増。’26年2月期はさらに伸び、38億円の見込みだという。

 

とはいえ、昨年50周年を迎えたモンチッチの“人生”は、人間さながらに紆余曲折だ。

 

セルロイド玩具の加工業として、1918年に設立した同社は、戦後、ソフトビニール素材(塩化ビニル)の製品化に成功して、売り上げを伸ばしていった。

 

’72年に顔や手足はソフビ素材、胴体は布やわたで作られた「くたくたモンキー」が大ヒットすると、その弟分として、’74年にモンチッチが誕生。男の子が「モンチッチくん」、女の子が「モンチッチちゃん」として親しまれた。

 

 

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