26年前に名古屋市のアパートで主婦の高羽奈美子さん(当時32)が殺害された事件で、10月31日に愛知県警は、安福久美子(69)を殺人容疑で逮捕した。
この逮捕劇が世間を震撼させたのは、安福容疑者が被害者の夫である悟さん(69)の高校時代の同級生だったことだ。
愛知県警の調べに対し、「学生時代に悟さんに好意があった」「悟さんの女性や子育ての考え方が嫌だった」という趣旨の供述をしていたことが捜査関係者への取材でわかった。
この事件が起きる5カ月ほど前、2人は25年ぶりに同窓会で再会している。
■久しぶりの級友との再会に浮かれていると、知らぬ間に恐ろしい不幸の歯車が……
「同窓会というと、昔の友人との再会に心が躍るように思われますが、なかにはトラブルに発展するケースも多くあります。感情のすれ違いや妬み・恨みなどが重なると、思いがけないことが起こりうるんです」
こう警鐘を鳴らすのは、相続のよろず悩み相談も行う行政書士FP武井事務所の行政書士・武井敦司さんだ。同窓会にまつわる相談も寄せられるという。
「参加しているメンバーが学校を卒業してから現在までどのように過ごしてきたか知りません。そういった集まりのなかに、現在、家庭環境や仕事がうまくいっていない人が参加していると、思わぬ恨みを買ってしまうことがあります。話を聞いているふりをして、仕事や家庭のことを根掘り葉掘り聞き出して、事業が成功していたり、家庭円満の者などに対して、嫌がらせを行うことがあります」
名古屋の事件のように、殺人にまで発展するのは特殊なケースだが、過去には、いじめられた者が、復讐のために同窓会を企てた事件もあった。
■金銭トラブルや宗教やマルチ商品の勧誘も多い
同窓会が招いた事件に戦慄するばかりだが、一般的に起こりやすいのが金銭トラブルだ。
「先日、シニアの方から同窓会で久しぶりに会った級友にお金を貸したところ、連絡が取れなくなったというご相談を受けました。昔の仲間だから、困っている様子に同情して、お金を貸してしまったようです」(武井さん)
そこには、青春時代の美化された思い出や、学生時代の友人からの頼まれごとをむげにできないといった心理が働いているという。
さらに同窓会の幹事が、会費を徴収したまま連絡が取れなくなるという事件も度々起きている。
「金銭トラブルだけでなく、同窓会をきっかけとした宗教やマルチ商法などの勧誘も多いです。同窓会で再会し、その場では昔話などで親交を深めて連絡先を聞き出す。後日、改めて誘い出して、勧誘するというわけです」(武井さん)
“学生時代の友人”という関係性が、いつもなら警戒するはずのハードルをグッと下げてしまう原因だという。
