トマト、なす、きゅうり。夏野菜がおいしくなる時季だが、これから旬を迎える野菜の価格は、昨夏以上の高騰が予想されている。
「昨年の夏野菜が平年より2~3割ほど価格上昇したのは、記録的な猛暑による『生育不良』が主な原因です。夏野菜の最高限界(生育限界)温度は35度とされており、暑さに強い野菜でもうまく育たず、屋外の畑で育てる露地栽培はほぼ壊滅状態に。
また、酷暑により生産者の労働効率が大きく低下したことも、値上がりの要因です」
こう語るのは、野菜生産者をサポートする千葉県のJA職員。
今年も記録的な猛暑になるという予報が出ているが……。
「酷暑に加えて、地球規模で豪雨や干ばつ、高温といった異常気象をもたらす『スーパーエルニーニョ』が10年ぶりに発生するかどうかが気がかりです。とくに大型の台風の発生が増えるおそれがあり、強風と大雨は、茎が折れたり実が傷ついたりと夏野菜に大きなダメージを与えてしまいます」(前出・JA職員)
さらに、中東情勢の緊迫化の影響が夏野菜を直撃しているという。農作物の生産に使う資材や包装材などの多くが、価格が高騰しているナフサを原料とする石油化学製品だからだ。
トマトやなすなどの野菜を栽培している柴崎農園(群馬県高崎市)の小林郁子さんがこう語る。
「露地栽培に比べて天候の影響を受けにくいビニールハウスでの野菜作りには、地温の調節や雑草の抑制のため、農業用マルチシートが欠かせません。このマルチシートがナフサの高騰により品切れになったり、入手できても3割以上値上がりしていたりします。
また、きゅうりやなすなどはまとめて包装して出荷しますが、その包装材やプラスチックトレイが軒並み急騰しています。
業者からは“今後は(農業資材が)手に入らないかもしれない”と言われ、途方に暮れていたところです。いずれにしろ、これら農業資材の高騰は、野菜に価格転嫁していかないと経営が成り立たなくなってしまいます」
再び起こる記録的な猛暑、スーパーエルニーニョ、そして“ナフサショック”で夏を代表する旬の野菜の価格が跳ね上がるのだ。
前出のJA職員がこう語る。
「現状でもガソリン代の高騰により物流コストが押し上げられ、中国の輸出規制や中東情勢により、輸入に頼っている化学肥料も大幅な値上げが続いています。そこにさらなる悪影響が重なれば、品質が多少落ちていても、通常、きゅうり3本入りパックで100円のものが300円(1本100円)以上になったり、また平年なら1個100?200円のトマトが400円を超えても不思議ではありません。
もはや夏野菜は高級野菜だと考えたほうがいい」
総務省が5月12日に発表した家計調査(2025年度・2人以上世帯)によると、消費支出に占める食費の割合「エンゲル係数」は28.8%となり、1980年度(28.9%)以来、45年ぶりの高い水準に。生鮮野菜は食費の約7~8%を占めており、今年の夏野菜の高騰は、さらなる大打撃を家計に与える。
「家計を守るなら、買い控えをするよりも、上手なストック方法を知ることがポイントです」
そう語るのは、冷蔵庫と食品保存のスペシャリストで『野菜まるごと冷凍テクニック』(パイ インターナショナル)の著書がある料理研究家の島本美由紀さん。
「夏野菜は安いときにまとめ買いをして、野菜の特性に合わせて冷蔵と冷凍を使い分けて保存すれば無駄なくおいしく食べきることができます。価格高騰が見込まれる今夏こそ、的確な野菜の保存法を知って、家計の負担を少しでも軽くしましょう」
じつは、夏野菜は暑さに強そうに見えても、高温多湿や冷やしすぎに弱いものが少なくない。
