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W杯やオウム死刑囚の全員死刑執行が大きく報道される陰で、政権による2つの法案が進行中。それは国民のインフラや健康を大きく害する危険が! 経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた――。

 

7月22日に国会が閉会しました。モリカケ問題で紛糾していた印象がありますが、実は、政府が先の国会に提出した法案65本のうち、60本が成立しています。

 

なかでも、カジノを解禁する「IR実施法(以下・カジノ法)」や参議院の定数を6増する「公職選挙法の改正」など、議論を尽くしたとは言えない法律が多すぎます。

 

特に、「水道法の改正」は衆議院の委員会で、わずか2日間のべ8時間しか審議されていません。それでも衆議院で可決。参議院では時間切れで継続審議になりましたが、次の国会は、参議院審議から始まります。残念ながら、成立はもう時間の問題でしょう。

 

しかし、改正水道法には、私たちの生活を揺るがしかねない大きな問題が含まれます。

 

これまでは、水道事業を民間に委託することはあっても、主体は自治体にありました。ですが、改正水道法が成立すると、運営権そのものを民間にゆだねる“実質民営化”となってしまいます。私たちの大切な生活インフラを、民間に任せていいのでしょうか。

 

しかも、民営化と聞いて国内の事業者を想定するのは大間違いです。世界には「水メジャー」と呼ばれる大会社が3つあります。その1つフランスの「ヴェオリア」は、浜松市などの下水道運営権をすでに委託されています。水メジャーは、虎視眈々と日本市場をねらっているのです。

 

今、日本では、蛇口をひねれば飲める水が出てきます。改正水道法は、この上質な水道網を失うきっかけになりかねないと、大きな危機感を、私は持っています。

 

さて、先の国会会期中には、大災害が起きました。7月初旬の西日本豪雨です。災害対策は初動が肝心ですが、そんなことはお構いなしに、衆議院では改正水道法を審議。7月5日に可決されました。

 

その後、西日本豪雨による死者が200人を超え、最悪の被害に拡大しても、野党が「災害対策を優先しろ」と訴えても、政府はカジノ法案の審議を譲りませんでした。そして、会期末ギリギリの7月20日に成立させたのです。

 

国民の命より、カジノ解禁を急ぐとは、もってのほかです。安倍政権は、国民のことなど考えていないのだと思います。安倍首相は、トランプ大統領とカジノ法の成立を、約束したのでしょう。その約束のために、カジノを日本で解禁するのです。

 

日本は今でさえ、他国よりギャンブル依存症患者が多いです。入場回数の制限や6,000円の入場料などが、ギャンブル依存症対策になるとは思えません。

 

また、カジノ法は、カジノ業者がお金を貸すことも認めています。貸すお金の利息は、2カ月間はゼロですが、それを過ぎると年14.6%の高金利に跳ね上がります。

 

カジノ客は「所持金が尽きたから」というやめ時さえなくなり、一発逆転を夢見て借金を重ねてしまうのが、当然の成り行きでしょう。国民より、カジノ業者の儲けに配慮したと言わざるをえません。

 

また賃金の上限額など、カジノ法は331項目が未定で、今後、国会審議を経なくてもよい省令で、詳細を決めていきます。カジノ法は成立しても、穴だらけなのです。

 

しかも、成立前の7月14、15日に実施された朝日新聞の世論調査では、「カジノ法は必要ない」が76%。カジノ法の成立は、大多数の国民の声を無視した結果です。

 

さらに、国益も考えていないのでしょう。世界では失敗続きの水道の民営化や、倒産が多く斜陽産業といわれるカジノを、世界の流れと逆行して導入するのですから、安倍首相は日本を滅ぼすつもりなのかと疑いたくなります。

 

こうした政府の動きを、私たちは忘れずに、今後の法律の行方を見定めていきたいものです。

経済ジャーナリスト

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