■あの時代の正義とは何だったのか
宮城さんは、生前の母にこんな質問をぶつけたことがある。
「なぜ、あの戦争を反対しなかったの? どうして、自ら死を選ぶようなことをしたの?」
すると母は、こう言った。
「あの時代にあなたが生きていたら、人をたくさん殺したろうね」
母の言わんとしていることを理解した宮城さんは、即座に反論することができなかった。
「大袈裟な言い方をすれば、私は私の“正義”に基づいて、いろんな活動に取り組んできました。それを母もよくわかっていたんだと思います。そして、あの時代の正義というのは、まさに戦争に勝つために戦うこと。だから、母は私があの時代に生きていたら、という言い方をしたんだと思います。そして母も、島の人たちも、自分たちの信じた正義に突き動かされて、あの結末を迎えたと思うんです」
現在の不穏な世界情勢を受け、沖縄や奄美地方で進む軍備の増強、それを歓迎する声も少なくない。
「それが正しい選択だと多くの人が思っているのかもしれません。でも、あの時代の座間味でも、島民の倍の数の兵隊が来て軍備が増強されて、島の人たちは安心したそうです。これで自分たちは守ってもらえる、安泰だと。でも、それは、あの結末を知るいまとなっては幻想でしかないことが明白じゃないですか。本当に守るべきものは国ですか? 国はあなたを守ってくれるでしょうか? そこをもう一度、自分のこととして皆さんには考えてほしいんです」
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