日本初のコロナ承認治療薬「ゾコーバ」に期待する人は多いが――(写真:アフロ) 画像を見る

5月以降、新型コロナウイルスの感染者数が全国的にじわじわと増加。沖縄県では6月下旬から感染者数が急増し、医療がひっ迫した。日本医師会も流行の第9波が始まったとの見方を示している。

 

そんななか、厚労省は塩野義製薬が開発した新型コロナウイルス治療薬の「ゾコーバ」にも、重大な副作用としてアナフィラキシーが追加されることを発表した。

 

アナフィラキシーとは、全身に起こる重いアレルギー症状で、激しい咳や呼吸困難に陥ったり、じんましんなどの発疹が出たり、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの症状が現れたり、ひどい場合は、呼吸困難から窒息死を招くこともある。

 

「今回、ゾコーバにこの重大な副作用が追加されたのは、臨床現場で2件のアナフィラキシーが認められたためです。アナフィラキシーは、ゾコーバの開発中には見られていなかったものだったのですが、塩野義製薬の判断で、薬の添付文書に重大な副作用としてアナフィラキシーを加えることが決まったという流れです」

 

こう解説するのは、千葉大学医学部附属病院臨床試験部助教の黒川友哉先生。黒川先生は日米の医療従事者、研究者で新型コロナウイルスについて正しい情報を伝える、日米の医療従事者・研究者からなるグループ「こびナビ」のメンバーでもある。

 

■ゾコーバを含む3つの新型コロナ治療薬の効果

 

現在、新型コロナウイルスの経口剤(飲み薬)には米メルク社が開発したラゲブリオ、米ファイザー社のパキロビッド、塩野義製薬のゾコーバの3つがある。

 

「ゾコーバは日本企業が開発した初の新型コロナウイルスの飲み薬として緊急承認された新薬です。ラゲブリオとパキロビッドは重症化リスクのある患者さんにしか使えませんが、ゾコーバは重症化リスクのない、軽症~中等症の患者さんに使える薬で、新型コロナウイルス経口治療薬の約6割を占めているそうです」(黒川先生・以下同)

 

ゾコーバは、もともと新型コロナウイルスの特徴的な5つの症状(咳、のどの痛み、鼻水・鼻づまり、発熱・熱っぽさ、倦怠感)に対して症状が約24時間短縮されるというものだ。ゾコーバの投与により後遺症リスクの低下も期待できるという調査結果も出ている。

 

重症化リスクのない患者への処方が可能という点から、医療機関でもほかの2つの新薬に比べて“処方しやすい薬”なのかもしれない。

 

ただ、ゾコーバは、処方できる患者が限られているという。

 

「抗精神病薬、睡眠導入薬、高脂血症薬、頭痛治療薬、降圧剤など、併用のできない薬が数多くあるため、ほかの疾患で薬を使っている人には非常に使いにくいのです。薬剤の血中濃度が乱れてしまうからです」

 

また、動物実験の段階で、胎児の奇形や流産が認められており、妊婦や妊娠の可能性のある女性への投与も禁忌となっている。

 

新型コロナウイルスの治療薬として2022年11月22日に緊急承認されたこともあって、その働きが期待もされるゾコーバだが、安全性に関する情報も限られていることに留意してほしいと黒川先生は強調する。

 

「新型コロナウイルスは、比較的元気で、多くの方と接触する機会のある人ほど感染しやすい疾患。投薬可能な人の条件を考えると、既往歴がない人や若い人には処方しやすい薬ではありますが、すぐに“治る”わけではなく、発症後72時間以内に服用すれば、1日程度、早く症状が改善されるというのがゾコーバの効果です。『コロナになったらこれを飲めば安心』という薬ではないため、患者さん側も安易な処方要求は避けましょう」

 

日本感染症学会が出している「新型コロナウイルス感染症診療の手引き第9.0版」には、ゾコーバの処方は、「発症から3日以内、かつ重症化リスク因子がなく、発熱、咽頭痛、咳などの症状が強い患者」と記されている。

 

さらにアナフィラキシー以外にも、発疹、痒み、吐き気、下痢、頭痛などの副作用があることがわかっており、使用の際は同意書に署名が必要な薬でもある。

 

一方、ほかの新型コロナウイルスの経口治療薬であるラゲブリオはほかの薬を定期服用している人にも使え、重症化リスクを30%低減するとされている。パキロビッドは重症化リスクを88%低減させるとされるが、ほかの薬との併用には注意が必要だ。

 

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