新潟の農家で10人兄弟の末っ子に生まれた次作さん。「東京に出て来るまでは、山奥で土方やってた。楽しかったよー、何も考えないで働いてるだけだから。山でね、地すべりが起きるの。止めないと信濃川に土砂が流れて、川がつまって洪水になる。その地すべりを止める工事の、さらに準備の工事。道を作るんだね、工事の機材とかを運ぶための道を。その工事」 そして冬に積もる4mの豪雪。「家守るの大変なんだから! 雪おろしじゃないんだよ。四方に積もった雪に押しつぶされないように、家を“起こす”んだから!」 芙美子さんもうなずく。次作さんと同郷の芙美子さん。集団就職で愛知の紡績工場で働くが、その後「若月」の2代目として働いていた次作さんのお姉さんの紹介で、次作さんと結婚。お店で働きはじめる。“一見さん”でもカラッと小気味よくもてなしてくれる芙美子さんだが、働き始めた頃は「ありがとうございましたも言えなかった」と笑う。「慣れ、ですね。今も性格は変わらないですよ。気を使って喋れなくなったり、いっぱい喋ったり(笑)。最初はラーメン屋で働くなんて絶対にヤだった! 知り合いにラーメン屋に嫁いだ人がいてね。どれだけ忙しくて大変かさんざん見てたから。それでも、これしかなかった。縁でしょうね」 雪深い新潟を離れ、縁あって一緒に働きはじめた2人。故郷での雪おろし、次作さんが話を続けた。 「雪に潰されないように、ね? 毎年毎年、そんな一生懸命やってさあ、溶けて流れりゃ、なんにもないんだよ。なにもない。でもそれがね。長い時間をかけて溶けて、水になって流れていくと、魚沼のコシヒカリになるんだよ…」