にぼしをギュッと丸しぼりしたような、熱々のスープ。汁気をほどよく吸いながらコシを残した歯ごたえの麺。チャーシュー、メンマ、ネギ、ほうれん草、ひとかけのゆず。とっても食べやすくて、どんどんどんどん箸が進む。ひと口めのインパクトが強いのに、最後のひと口までおいしい。千葉の松戸にオープンして7年、シンプルでおいしい醬油ラーメンと評判なのが、「まるき」の中華そば(小・650円)だ。
「僕みたいな若造で大丈夫ですか?」店主の高橋正文さんは39歳。これまで東京の老舗を紹介してきたこのブログ、読者のみなさんも一瞬違和感を覚えるかもしれないが、高橋さんの作るラーメンの味とその経歴を知れば納得できるはず。東京・永福町の老舗「大勝軒」(たいしょうけん)の流れをくむ千葉・柏の名店「大勝」(だいかつ)で修業、多くの人に愛されてきた伝統の味を見事に再現している“若造”なのだ。
高橋さんは中華料理出身。もともと表参道の一流店で腕をふるっていた。そんな高橋さんをして、「この味は僕じゃ作れない」とうならせたのが「大勝」の中華そばだった。
「その日おいしいんじゃないんですよね。次の日とか3日後とかに、どうしてもまた食べたくなる。食べてる最中はとにかく『熱い!』とにぼし、かつおの匂いしか感じないんだけど、後からおいしい」。
昔からラーメン好きでいろんな店を食べ歩いた高橋さんだが、そこは調理のプロ。「僕らの作ってるラーメンの方がおいしいくらいの」気持ちでいたという。でも「大勝」の味は違った。「にぼしを1キロ2キロ使ってみたり…自分なりに試行錯誤して作ってみても、どうしても作れなかった」。27歳。ステータスある職場で働き、すでに妻と子供もいた高橋さんだったが、一杯のラーメンに感動。「大勝」でのゼロからの修業を夢見るようになる。