にぼしが強く効いた熱々のスープ。一歩間違えば食べづらい味になりそうなのに、「まるき」のラーメンは、なぜかとにかく食べやすい。スープ、麺、具。1杯のバランスが絶妙なことも理由だろうが、それ以上に"サービス精神を感じる味"だから食べやすいのだと思う。こだわりは感じるけど、親しみやすい。食べると元気になる。
話が前後するが「大勝」時代に初めてお店を任された時、高橋さんの意識は大きく変わったという。「それまでは単に言われていた仕事をこなしていたのが、その時初めて『おいしいものをもっと作りたい』と思ったんですね。お客さんの顔を見て、この人にはもっとおいしいものを作ってあげたいって思ったんです」高橋さんの"情熱とサービス精神"を伺わせる話は続く。
「表参道で働いていた店では2000円?3000円のランチを出していた。でも僕は庶民ですから、お昼のイメージって1000円でお釣りが来るものなんですよね。毎日食べれて、お釣りでタバコやジュースの1本も買えて」。松戸の官公庁街にある「まるき」にはたくさんのサラリーマンがお昼を食べに来るという。そして松戸は高橋さんと智子さんの地元。取材中も近所のご夫婦が店の前を通り、高橋さんに「大根おいしかったわよ!」と声をかけていた。新しいお店だけど、地元に密着している。実は「大勝」での修業時代、師匠から店を継ぐ話を持ちかけられていた高橋さん。これ以上はない光栄な話だが、でもどうしても地元で自分の店を持ちたかった。
七が三つの"き"の字にマルで「まるき」。高橋さん夫婦の結婚記念日が平成7年7月7日。"あの頃の気持ちを忘れずに2人でがんばっていこう"の思いが込められている。「大勝」の名は、修業時代に生まれた2人の息子にそれぞれ一字ずつ与えた。
「僕の両親は小さな製麺所を夫婦2人で営んでいたのですが、自営業で忙しかったので、家族で外食とか行けなかった。同級生のサラリーマンの家族が外食に行く話とか聞いては、憧れてましたね。外食への憧れは小さい頃からあって、自分の店を家族とやりたい思いはずっとありました」
高橋さんの幼い頃からの外食への憧れと「大勝」で出会った一杯の感動が、「まるき」の"情熱とサービス精神を感じる味"を生んだのかなと思う。