「ケトン体というのは、体内の糖質が少なくなったときに出てくる“緊急用”のエネルギー源。体が“飢餓状態”に陥ると産生されるように遺伝子に組み込まれていて、栄養不足の時代も人類は、このケトン体で生き延びてきたのです。現代でも、たとえば、夕飯を抜いた翌朝、グゥ〜とおなかが鳴ったときに出ている場合もあります」
そう説明してくれたのは、がん専門医である古川健司医師の監修のもと、『免疫栄養ケトン食でがんに勝つレシピ』(光文社)を出版した、管理栄養士の麻生れいみさん。この食事療法のカギとなるのが“ケトン体”だという。
「がん患者に『免疫栄養ケトン食』を3カ月以上実施したところ、がん細胞が小さくなったり、消滅するなどして、その83%に効果があったことが臨床研究でわかりました。治療だけでなく、再発を含めたがんの予防や、認知症予防などにも効果的です」
これまで、人間の体を動かすエネルギー源になるものは、糖質だけだと考えられてきた。ところがケトン体もその役割を担うという最新の研究結果を受け、この食事療法が編み出されたのだ。
「ケトン体は脂肪を燃やすことで作られますが、その脂肪燃焼を邪魔するのが糖質。さらに糖質はがん細胞の栄養になることもわかっています。糖質の摂取を制限し、ケトン体を出す体質になることで、エネルギー源はケトン体で確保しながら、がん細胞に栄養を与えずに弱らせて、がんを小さくしたり、死滅させられる可能性があるのです」
糖質は、炭水化物のごはんや麺、パン、そして砂糖や果物などに多く含まれている栄養素。「免疫栄養ケトン食」は、まず糖質を含む食べ物を控えることから始める。麻生さんの著書『免疫栄養ケトン食でがんに勝つレシピ』にはじつに60ものレシピが紹介されている。そんな、がん細胞の栄養源となる糖質の摂取を制限でき、代わりのエネルギー源となるケトン体の産生を促し、かつ栄養たっぷりで免疫力をアップするレシピの中から、えりすぐりの2品を麻生さんが紹介してくれた。
■アボカド入りゴーヤーチャンプルー
【材料】2人分
ゴーヤー…1/2本
アボカド…1/2個
木綿豆腐…1/2丁(150g)
豚もも薄切り肉…120g
卵…1個
かつお節…少々
減塩しょうゆ…小さじ1
塩・粗びき黒こしょう…各適量
ココナツオイル(無香)…大さじ2
MCTオイル…小さじ2(1人分)
【作り方】
1. ゴーヤーは縦半分に切り、わたと種を取り除き、薄切りに。軽く塩を振ってもみ、5分ほどおいたら水洗いして、水気をきる。アボカドは半分に切って種を取り、食べやすい大きさに切る。
2. 豆腐はペーパータオルに包んで重しをし、15分ほどおいて水きりをしてから、食べやすい大きさに切る。卵は割りほぐす。豚肉は3cm幅に切り、塩・黒こしょう各少々を振る。
3. フライパンにココナツオイルを入れて熱し、豚肉を加えて炒め、肉の色が変わったらゴーヤー、豆腐を順に加えて炒め合わせる。塩・黒こしょう各少々を振り、ふたをして弱火で2分ほど蒸し焼きに。
4. ふたを取り、溶き卵、減塩しょうゆを回しかけ、ひと混ぜする。最後にアボカドを加えて炒め合わせ、器に盛り、かつお節を。食べる直前にMCTオイルをかける。
「ビタミン、ミネラル、脂質を多く含むアボカドは、果物なのに糖質が100g中1g以下の優秀食材。毎日、半玉を食べてほしいくらい」(麻生さん)
■大根の葉のひき肉炒め
【材料】作りやすい分量
大根の葉…1本分(150g)
合いびき肉…200g
にんじん…20g
にんにく…1片
A〔減塩しょうゆ…小さじ2、自家製みりん(鍋に糖質0日本酒250gと、糖質0甘味料を好みの量50〜100gを入れ、弱火にかけて煮溶かす)…大さじ1、オイスターソース炒め…小さじ1〕
ココナツオイル(無香)…大さじ1
MCTオイル…大さじ2(1人分)
【作り方】
1. 大根の葉はよく洗ってみじん切りにし、茎と葉の部分を分けておく。にんじん、にんにくはみじん切りに。
2. フライパンにココナツオイルとにんにくを入れて熱し、香りが立ったらひき肉を加えて炒める。
3. 火が通ったら、大根の葉の茎の部分を加えて炒め、さらに葉の部分、にんじんも加えて、Aを入れて混ぜ合わせる。
4. 1人分ずつ分けて器に盛り、食べる直前にMCTオイルをかける。
「免疫力を高める効果や、がんを予防する成分が豊富な大根の葉を、捨てるなんてもったいない! 油と一緒に食べると吸収力が高まるので、熱に強い油で炒めて」(麻生さん)