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「植物は、紫外線や害虫などから自分の身を守るため、皮に近いところにフィトケミカルという成分を持っています。これは植物の色素や香り、辛味、あくにある成分で、代表的なのはポリフェノール。抗酸化力、免疫力のアップにつながると、近年注目されています。皮をむいたり、あく抜きをしたりすることで、せっかくのフィトケミカルのパワーが失われてしまうんです」

 

こう語るのは『その調理、9割の栄養捨ててます!』(東京慈恵会医科大学附属病院栄養部監修/世界文化社)に取材協力として参加する管理栄養士の弥冨秀江さん。エビデンスをしっかり示していることが話題となり、栄養指南書としては異例の売れ行きをみせている。

 

「かつて、あくは抜くものでした。でも、栄養に関する研究は、日々進んでいるんです。あくは、老化の原因となる活性酸素を除去する作用、抗酸化力のもと。山菜などのあくの強いもの、またはシュウ酸を含有するほうれん草などの一部を除いて、野菜のあくは抜く必要がありません」(弥冨さん・以下同)

 

あくは抜かない、皮は極力むかない、切り方は野菜ごとに変える。これをしないと野菜の栄養のほとんどを捨てていることになるという。

 

「私たちの健康は、不規則な生活やストレス、紫外線などの影響で発生する活性酸素によって脅かされています。活性酸素は、体をサビつかせて生活習慣病やがん、老化の原因になるといわれているもの。人間の体には本来、活性酸素を退治する抗酸化物質が備わっていますが、活性酸素の過剰発生に追いつかず、不足しているのが現状。この救世主として注目されているのが植物特有のフィトケミカルです。できるだけ効果的に摂取するため、現在の調理法をぜひ見直してほしいですね」

 

そこで、夏野菜の栄養をムダにするNG処理を紹介。夏野菜の豊富な栄養をもう逃がさないで!

 

■トマト

 

トマトは低カロリーなのに豊富な栄養成分を持つ最強の“美容”夏野菜。美肌や風邪予防効果のあるビタミンC、老化を抑制するビタミンE、塩分の排出を助けるカリウム、腸内環境を整える食物繊維などをバランスよく含む。なかでも注目はトマトの赤色のもと、リコピン。カロテノイドのなかでもっとも抗酸化作用が強く、その作用はビタミンEの100倍以上!生活習慣病予防や老化抑制にも効果があるといわれる。脂溶性のため油と一緒に取ると吸収率がアップ。

 

【NG処理】きゅうりに含まれるアウコルビナーゼという酵素がトマトのビタミンCを酸化させてしまう。一緒に食べるなら、アスコルビナーゼの働きを抑える酢を加えよう。

 

■なす

 

なす独特の紫紺色の成分はアントシアニン系の色素、ナスニン。なすでしか取れないこのナスニンは、活性酸素を体から取り除いてくれるポリフェノールの一種。特に血液浄化作用が高く、発がん物質を除去すると期待されている。

 

【NG処理】皮の部分に、あくとなるポリフェノールが多いので、皮は絶対むかないこと。また、ナスニンは水に溶けるので、水にさらすと抗酸化作用がなくなってしまう。切ってすぐ調理すれば、あく抜きは不要。切ったらすぐに相性のよい油で調理しよう。

 

■ゴーヤ

 

ゴーヤのビタミンCは、きゅうりやトマトの5倍以上。さらに、このビタミンCは熱に強いので、加熱調理でも失われない。独特の苦みはモモルデシン。胃腸の粘膜の保護や、食欲増進効果があり、夏バテしやすい時期には最適。

 

【NG処理】苦味を抜くために下ゆですると、水溶性のビタミンが流出する。スライスしてから塩をふって袋に入れ、上からよくもみ、流水でサッと洗おう。苦味が抜けるうえ、ビタミンも守られる。洗いすぎには要注意!

 

■玉ねぎ

 

玉ねぎの特徴的な辛味と香り、そして涙のもととなる成分は、主にアリイン(硫化アリル)。この細胞を壊すことにより、血液サラサラ効果の高いアリシンに変化する。アリシンは肉や魚の臭いを消す働きや、体にとっては高血圧や糖尿病などによい効果があるといわれる。さらに殺菌効果も高く、風邪などの感染症の予防効果もある。できるだけ細かく刻んで調理するのが、栄養素を最大限生かせる食べ方といえる。また捨ててしまうことが多い皮にはポリフェノールの一種、ケルセチンが豊富に含まれる。煮込むとうま味が出るので、だしとして使うといい。

 

【NG処理】水にさらすとビタミンとともにアリシンも流出するのでNG!ゆでる場合は1分ほど炒めてからだと流出を軽減できる。

 

■枝豆

 

豆類と野菜、双方の栄養的特徴を持つ枝豆。タンパク質、ビタミンB1、カリウム、食物繊維、鉄分などを豊富に含んだ高栄養食材だ。またモリブデンが糖質・脂質の代謝、肝臓や腎臓の酵素の働きを助けるので、お酒のおともにも最適。

 

【NG処理】素晴らしい栄養素は、ゆでるとほぼ水に流出して台無しに!レンジで加熱するか、蒸し焼きがおススメ。また、枝についたままの豆は収穫後も呼吸を続けるため、1日で甘味が半減!すぐに食べられないなら枝から外すか、外した状態で売っているものを選ぼう。

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