「『梅干しはその日の難のがれ』という言い伝えもあるように、さまざまな健康効果があり、古くから民間療法にも使われてきました。塩分が高いのではないかと気にされる方もいますが、私が長年集めたデータによれば、梅干しの摂取と高血圧の関連は見つけることができませんでした」
そう話すのは、和歌山県立医科大学准教授の宇都宮洋才さん。梅研究20年以上の「梅干し博士」だ。今が旬の梅のさまざまな健康効果のなかでも、最近特に注目されているのが生活習慣病の予防・改善効果。
「血圧上昇や動脈硬化の進行に関わるホルモンの作用を抑制したり、血糖値上昇に関わる酵素の働きを阻害する作用なども明らかになっています。また体内の抗酸化力を高めたり、骨粗しょう症予防の効果もあるなど、まさにいいことずくめです」(宇都宮さん・以下同)
宇都宮さんは、「特に夏には積極的に食べていただきたいですね」と語る。
「梅干しには食中毒菌を抑制する作用もあり、塩分やミネラルが補給できるので熱中症対策にもなるからです。タイミングとしては、朝食時にお茶などの水分といっしょに取るとよいでしょう。また食欲も増進させるので、肉類などのタンパク質といっしょに食べると夏バテ防止になります。特に梅干しのクエン酸と豚肉のビタミンDの組み合わせは疲労回復効果も期待できます」
最近は「焼き梅ダイエット」も注目されている。
「梅干しは脂肪細胞を小さくする成分、バニリンを豊富に含んでおり、さらに熱を加えるとバニリンの総量が増加します。もちろん料理で煮たり焼いたりしてもバニリンは増えるので、調理の下味などに使うのは理にかなっていると言えますね」
宇都宮さん自身、毎日朝食と夕食に梅干しを食べる生活を続けたところ4カ月で16キロの減量に成功したそう。
「わが家では毎日ご飯を炊くときにも梅干しを入れています(米3合に対し梅干し1個)。酸味が米の甘味を引き出して、冷めてもおいしいですよ」