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暮らしを見直す機会となったコロナ禍で、注目度が急上昇したのが「薬草」。じつは身近な植物が多く、育てやすく、日々の生活で無理なく使えるのだ。不調のお守りになる“クスリ”を自宅で楽しく育ててみよう。

 

「薬草とは、その名のとおり、薬用となる植物。地上に出ている茎や葉を指してハーブと呼びますが、根や実、皮など、そのすべてを含んだものです。日本でも、薬草は昔から暮らしや文化のそばにありました。たとえば、家族の健康を願ってお正月に飲むオトソには、解熱作用のあるニッケイ、せきやタンを抑えるキキョウなど、体にいい薬草がたくさん使われていますし、ほかにも胃腸の疲れをとる七草がゆ、ドクダミ茶、ヨモギもちなど、挙げたらきりがありません」

 

そう話すのは、好きが高じて薬草を仕事にした新田理恵さん。なぜ、今また薬草が注目を集めているかといえば、“地域の食”が見直されてきているからだという。

 

「世界的な流れでもあるのですが、『身近にこんなおいしいものがあったのか!』と、グローバル化が進むなかで忘れ去られてきた食材や食文化が再発見され始め、そこには必ずといっていいほど、薬草が関わっているんです。昔から食べられてきた理由は、その土地で生きるヒトの体に必要だったからであり、当たり前のことなんですよね。“苦い”イメージが強いですが、味わいも香りもじつにさまざまで、それがあるからこそのおいしさになっています。私が日本の薬草にこだわるのは、同じ気候風土で育ったものが、やはりいちばん自分の体に合うから。とり入れてみると、じわじわと体が変わってくるのを感じます」

 

体によくておいしいのなら、もっと知りたくなるというもの。

 

「コロナ禍で、家での暮らし方や自然のよさ、あるべき姿などが見直されているので、今後ますます薬草の人気は高まっていくと思います。勝手に摘んではダメですが(笑)、道端にも生えているし、ガーデニングセンターに行けば、簡単に手に入ります。繋殖力も強く、育てるのも難しくありません。広いスペースがなくても、キッチンやベランダでも育てられるので、ぜひ試してみてください」

 

そこで、代表的な3つの「おうち薬草の育て方」と「女性におすすめの薬草」を紹介。上手に育てるポイントは、いつでも状態がわかるよう、目につく場所に置くこと。

 

■苗から育てる

 

ポットの苗を購入して育てる、いちばん手軽な方法。ポットのままでは小さいので、ひとまわり大きな鉢に移植する。用意するものは、鉢、鉢底ネット、赤玉土、培養土。

 

(1)まずは鉢底ネットを適当な大きさにカットし、鉢穴の上にのせる。赤玉土を鉢の底から2cmほどの高さまで入れる。

(2)赤玉土の上に培養土を重ねる。量の目安としては、苗を入れたときに、苗の土の表面が鉢の縁から1cmほど下にくる程度。

(3)2の培養土の量は、事前に苗を鉢に入れてイメージを。その後、中央に苗を置き、まわりを培養土で埋め、水をたっぷり注ぐ。

 

■種から育てる

 

手間と時間はかかるものの、育てる楽しみはひとしお。用意するものはポット(直径7cm前後)、培養土、液体肥料、トレイ。ある程度育ったら、「苗から」と同様に移植する。

 

(1)ポットの2/3程度の高さまで培養土を入れたら、水を注ぐ。その際、底穴から茶色い水が流れ出てくるまで、たっぷりと。

(2)ポットひとつに、3〜5粒の種をまく。間隔をあけて置いたら、種が軽く隠れるくらいまで、再び上から培養土をかける。

(3)トレイにポットを並べ、トレイに水を注いでポットの底から水を吸わせる。表面の土の色が変わればOK。

(4)トレイの水を捨て、強い風雨が当たらない軒先などに置く。土の表面が乾いたら、霧吹きなどで軽くうるおす。

(5)芽が出て葉が開いてきたら、1〜2つのみを残し、あとはハサミで切って間引く。液体肥料を少し与え、苗の成長を待つ。

 

■挿し木する

 

ニワトコ、ベニバナなどの枝ものは、苗から育てるよりも、挿し木が扱いやすくておすすめ。用意するものは、鉢、鉢底ネット、赤玉土、培養土、園芸用ハサミ。水をたっぷり吸わせるのが成功のカギ。

 

(1)元気のいい枝を選んで7〜10cmにカットする。水をよく吸収するよう、先は斜めに切る。

(2)半日以上水につける。「種から」と同様、土を準備して差し込んで水を注ぎ、根が張るまで日陰に置く。

 

■ベニバナ

 

〈効能〉キク科の一年草。血のめぐりをよくする作用で知られ、目の下のクマ、冷え性、肩こりの改善が期待できる。また、婦人病全般や、動脈硬化、脳梗塞といった生活習慣病の予防と改善にも。

 

〈育て方〉日当たり、風通し、水ハケのよい場所を好むので、ベランダや庭で育てる。トゲがあるので注意を。

 

〈使い方〉夏に咲く黄色い花びらを、乾燥させてから使う。香りが強いので、薬草酒のほか、紅茶や番茶とブレンドして薬草茶、オイルに漬けて薬草オイルにしても。料理の具材としても使える。

 

〈活用術の一例〉薬草酒にして血のめぐりをよくする。花びらを乾燥させ、赤ワインに2週間ほど漬ける。花びら大さじ1に対し、赤ワイン350ml、しょうがのスライス5枚、シナモンスティック1本、砂糖(できればきび砂糖)30gが目安。

 

■ニワトコ(エルダーフラワー)

 

〈効能〉スイカズラ科の小高木。骨や関節の痛みに作用するほか、粘膜や呼吸器をきれいにするので、風邪の初期症状の緩和に。利尿・発汗・沈静作用にすぐれ、デトックスやクールダウンにも。

 

〈育て方〉日なたを好むが、キッチンで育てることもできる。土の表面が乾いたら、そのつど水をやる。

 

〈使い方〉マスカットのような香りの花びらを使う。コーディアルにするほか、ジャムに混ぜてもおいしい。また、その香りにはリラックス効果もあるので、アロマオイルにして携行しても。

 

〈活用術の一例〉クールダウンに効果的。花びらを乾燥させ、水、砂糖とともに弱火で15分煮てレモン汁を加える。花びら20gに対し、水1カップ、砂糖(できればきび砂糖かはちみつ)180g、レモン汁大さじ1が目安。炭酸水などで割って飲む。

 

■クチナシ

 

〈効能〉アカネ科の常緑低木。目の充血や口内炎、筋肉痛などに効果があり、体の外と内側、両方の炎症を抑えることで知られる。また、血液トラブルにも効能があるため、止血にも用いられる。

 

〈育て方〉太陽を好むものの、乾燥には弱いので、ベランダや庭の半日陰で育てる。水はこまめにやる。

 

〈使い方〉実にはあまり香りがなく、これを乾燥させて使う。紅茶や番茶とブレンドして薬草茶にしたり、筋肉疲労をとる入浴剤に。ただし、浴槽に色がつくので注意。葉は湿布薬にすることもある。

 

〈活用術の一例〉口内炎のケアに活用する。まずは実を乾燥させ、煮出す。実1個に水1カップを加え、弱火で15分が目安。残ったぶんは冷蔵室で数日間、保存できるが、そのまま飲んだり、お茶に加えてもよい。

 

■ハッカ

 

〈効能〉シソ科の多年草。蚊など、虫よけの効果で知られる。また、クールダウン効果があるので、風邪の熱冷ましに用いる。そのほか、頭痛やめまいの緩和、おなかの調子を整える作用も。

 

〈育て方〉日当たり、風通し、水ハケのいい場所を好むので、ベランダや庭が好ましいが、キッチンでも育てられる。

 

〈使い方〉葉を乾燥させ、薬草茶やシロップに。また、フレッシュなまま、スイーツやサラダ、生魚に添えても。虫よけスプレーにした場合、ペットや小さな子どもにも安心して使えるのがうれしい。

 

〈活用術の一例〉虫よけや消臭用のスプレーとして活躍。葉を乾燥させ、ホワイトリカーに2週間ほど漬ける。葉2.5gに対し、ホワイトリカー220mlが目安。ボトルに移し、暑い時季は冷蔵室で冷やして使用すると気持ちいい。

 

晩夏から秋にかけての収穫・活用を目指し、今すぐ始めよう。

 

「女性自身」2020年7月7日号 掲載

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