冬も本番となり、気をつけたいのが毎年流行するインフルエンザ。日常生活の中で簡単にできるインフルエンザ予防法として、“緑茶”が注目されているのを知っていますか?無糖でノンカロリーでいつでもどこでも飲める緑茶のすごい効果を調べてみました。
■1日1~5杯の緑茶飲用でインフルエンザ40~50%減
「茶は養生の仙薬なり。延命の妙術なり。」と言ったのは、鎌倉時代に「喫茶養生記」をまとめた栄西禅師。昔から茶の効用は知られていたことがわかりますが、近年の詳しい研究で、緑茶に含まれる「緑茶カテキン」の多様な健康効果が明らかになっています。「緑茶カテキン」には抗インフルエンザウイルス作用、認知症予防作用があるほか、生活習慣病やがんの予防効果も研究・報告されており、今、緑茶の力があらためて注目されています。
とくに、これからの季節に気になるのはインフルエンザ。伊藤園中央研究所の提坂裕子所長と静岡県立大学薬学部の山田浩教授、社会福祉法人白十字ホームの田熊規方医師の共同研究では、カテキンを含む緑茶成分のインフルエンザ予防効果が実証されました。
「左下のグラフからもわかるように、緑茶成分を5か月間飲んだ人とそうでない人を比較した結果、緑茶成分を飲んだ人のほうがインフルエンザの発症割合が低くなっています」(提坂裕子所長)。
さらに、山田浩教授と菊川市立総合病院治験管理室・薬剤科の松下久美氏らの研究グループは、小学生2663名で緑茶カテキンのインフルエンザ予防効果を検討しました。「その結果、緑茶を6日以上飲む児童は、週に3日未満の児童と比べて、インフルエンザの発症が40%減少していることがわかりました。また、緑茶の飲用習慣が1日1杯未満の児童と比べて、1~2杯の児童では38%、1日3~5杯の児童では46%も減少していました。これらのことから、緑茶を1日1~5杯、週6日以上飲用することが、小学校児童のインフルエンザ予防に役立つ可能性が高いと言えます」(山田浩教授)。
■いつでもどこでも摂れる毎日の緑茶で健康に
実際に、小中学校でお茶による健康管理が推進されているところも。お茶の産地・静岡では、給食でお茶が出てくるのはごく普通のことで、蛇口からお茶が出る小中学校もあるというから驚きです。静岡県島田市では、子どもの頃からお茶に親しむ環境を整え、風邪予防などの健康管理に役立ててもらおうと、市内の小中学校6校に給茶機を導入しています。給茶機の上には「お茶をのもう!うがいをしよう!げんきになろう!」の貼り紙が。
「緑茶の効果なのか、この学校は風邪などで休む生徒が少ないような気がします」(島田市の小学校教諭)
(静岡県の島田市の一部の小学校では、給茶機が設置され、蛇口をひねると緑茶が出てきます。体育の後、児童は緑茶でうがいをし、給食時には温かいお茶が出されます。)
また、緑茶を摂る際、お茶の温度やうがいと飲用の違いなどで効果は異なるのでしょうか?
「緑茶は熱くても冷たくても、緑茶カテキンの作用は変わりません。緑茶によるうがいと同様、飲用でもインフルエンザ予防に効果があることが明らかになりつつあります。日常で習慣的に摂取することで緑茶の効用が高まることが期待されます」(山田浩教授)
風邪やインフルエンザ対策には、もちろんマスクや手洗いの予防策、体調管理も重要です。緑茶は家では茶葉、外出用にペットボトル飲料など日常生活に取り入れられる利便性があります。また緑茶カテキンは時間とともに減るため、ペットボトルの飲料があれば、いつでもどこでも場所を選ばず、手軽に摂ることができ、予防につながるでしょう。
■緑茶とごはんで緑茶カテキンが吸収しやすくなる
野菜茶業研究所の主任研究員・物部真奈美さんらの研究で、「緑茶とごはん」の意外な効果がわかりました。
「緑茶だけで飲むより、緑茶とごはんを一緒に食べたほうが血液中のカテキン濃度が上昇する傾向が見られることを確認しています。緑茶カテキンのひとつであるエピガロカテキンガレートは、タンパク質のほか、でんぷんなどの多糖類と結合し、腸で吸収されやすいエピガロカテキンに変化するので、緑茶とごはんの組み合わせで、緑茶カテキンの吸収性が高まるのです」